知識探偵クエビコ

人類史・古代史・神話の謎を探ったり、迷宮に迷い込んだり……

人類

【後編】縄文人、ラオス・マレーシアにルーツ? ゲノム配列解読――The prehistoric peopling of Southeast Asia――

論文内容に進もう。 The prehistoric peopling of Southeast Asia | Science supplement(これは今も普通に読めた) http://science.sciencemag.org/content/suppl/2018/07/03/361.6397.88.DC1 論文の昔のバージョン(縄文抜き) Ancient Genomics Reveals F…

【前編】縄文人、ラオス・マレーシアにルーツ? ゲノム配列解読――The prehistoric peopling of Southeast Asia――

ニュースと論文のまとめ 縄文人、ラオス・マレーシアにルーツ? ゲノム配列解読 縄文人、ラオス・マレーシアにルーツ? ゲノム配列解読:朝日新聞デジタル 約2500年前の縄文人の人骨に含まれる全ゲノム(遺伝情報)を解析した結果、約8千年前の東南アジ…

ネアンデルタール人は「芸術家」だった? 世界最古の洞窟壁画+α

このニュース。 (CNN) 世界最古の洞窟壁画を描いたのはネアンデルタール人で、身体装飾として貝殻を身に着けていた。研究チームの論文が22日付の米科学誌サイエンスで発表された。いずれの行動も、ネアンデルタール人が象徴的な思考を持ち、現生人類…

1万年前の英国人、褐色の肌に青い瞳 現代欧州の10人に1人とつながり

ちょっと前のニュースを、重点の異なる記事で。 最先端の科学分析によって、1万年前の英国人が褐色の肌と青い瞳の持ち主だったことが明らかになった。現代欧州人の10人に1人が、この時期の狩猟民とDNA的につながると言われている。ロンドンの自然史博物館と…

マレーシアで未知の言語発見

サプライズのあったニュースを。 次のニュースの面白いところは、あくまでも、発見されたのは「言語」であって、「民族」ではないこと。 既に知られた人々を調査してたら、実は知らない言語を話してたわけだ。 スウェーデン・ルンド大学(Lund University)…

アフリカ以外で最古の現生人類化石、イスラエルで発掘

出アフリカ関係のニュースです。 www.afpbb.com 【1月26日 AFP】アフリカ以外で最古の現生人類化石がイスラエルで発掘された。現生人類がアフリカを出て移住した「出アフリカ」の時期をめぐっては、過去の遺伝学的研究で従来考えられていたより約5万年早かっ…

アンダマン諸島のY染色体ハプログループD系統の解析

前回の最後に書いた事の答えは、タイトルの通り。 2018/4/3追記。Y-Full見たら、日本のD-M64.1の前側にアンダマン諸島の方々が来てた。ということは、今後日本のD1b-M64.1は、少なくとも一つ伸びてD1b1かD1b2ぐらいになるでしょう。 Y-FullでDの分岐の根元に…

ニュース:現生人類、「出アフリカ」は一度だけではなく、約12万年前から始まっている

少し遅れたけど、わかり始めてたことを、現時点で学者がまとめた研究報告のニュースです。 今回は、このニュースと該当論文以外の話もする。 現生人類、「出アフリカ」は一度だけではなかった 研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News 【12月8日 AFP】人類が…

スマトラ島でも73,000~63,000年前の化石発見――続報:ヒトが初めてオーストラリアに到達したのは約65,000年前だった

スマトラ島で重要な化石の発見があった。これは前々回のオーストラリアの発見に続くニュースでもある。 【考古学】現生人類のインドネシア到達の歴史を書き換える化石の発見 | Nature | Nature Research 現生人類がインドネシアのスマトラ島に到達したのは、…

遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?(前編)

1.きっかけ 中国・遼寧省錦州市のLiaoningさんがY染色体を調べてC1、しかもどうもC1a1が出たようだ。 錦州市は渤海・遼東湾の北の端にある。 そして、こちらの記事にコメント付けてくれた。 Y染色体で探る日本人の起源 4-2.氷河期が終わるまでにやっ…

ヒトが初めてオーストラリアに到達したのは約65,000年前だった

出アフリカにも関わる重要なニュースです。 必ず海を越えていくことになるオーストラリア移住ルートで、いままでより古い年代が出て、またトバ・カタストロフに近づいた。 【考古学】ヒトが初めてオーストラリアに到達したのは約65,000年前だった | Nature |…

オーストロネシア――熱帯動植物文化の探求・聖樹カジノキ再び

次はカジノキ(Broussonetia papyrifera、クワ科*1コウゾ属。漢字で「榖」*2)の話をまたしよう。以前のカジノキ記事の続きだ。でも、ラピタ人とブタとニワトリにも触れる。 まずは、そのときの論文よりちょっとだけ前の2014年12月の論文をさらっと。 約8000…

オーストロネシア――熱帯動植物文化の探求・イネ

そろそろオーストロネシアの話に戻ろうかなと。思い出しておくと、前はこの記事(オーストロネシアの人々――謎のヌサンタオ編)だ。 文化的な話を中心に、遺伝学など他の学問も絡めてやります。 以前のイネやもっと以前のカジノキの話の続きとその他聖樹だと…

考古学的な遺伝証拠はどのぐらい古くまで残ってるものか?

まだ古人類学シリーズで、遺伝子証拠の可能性だとか残りやすさの話をします。 実際の考古学的遺物としての遺伝子は、どのぐらいまで古く残ってるものなのか? これも気になってた。 現在のヒトDNA最古の解読記録が、43万年前(スペイン・カルスト地形(石灰…

猿人はどこから「ヒト」なのか? (化石編後編)

今回はアウストラロピテクス以降。メインテーマは「猿人はどこからヒト属(Homo)なのか?」。 つまり――「ヒト属(Homo)の祖先はアウストラロピテクス以降のどれなのか」+「最初のヒト属はどれなのか」――が問題となる。 このヒト属こそが"human"の概念に関わる…

類人猿はどこから「ヒト」なのか? (化石編前編)

今回は、実は分類より先に書き始めてた化石編だ。やっぱり長いんで途中で分けよう。 次の図が、ヒト科(hominidae)以下の化石も含んだ分岐図(wikipediaより)。 ただし、まだ意見の分かれてる部分(ヒト属homoがどこから分岐したのか、など各所)も多い。自分…

類人猿はどこから「ヒト」なのか? (分類編)

今回は、グレコピテクスのニュースの続きで、類人猿のまとめをやる。 自分もこの段階は今まで記事にしてなくて、知識のアップデートも整理もしてなかった。ちょうどいい機会だ。 ただし別のニュースが飛び込んできたから触れておこう。 今度の「人類の起源」…

類人猿グレコピテクスはヒトなのか?

類人猿グレコピテクス・フレイベルギ(Graecopithecus freybergi)は、ヒトとチンパンジーが分かれた直後の、最初の人類(ヒト)ではないのか、というニュース。 記事ではグラエコピテクス・フレイベルギ、となってるが、Graecoはグレコローマンのグレコでギ…

白保竿根田原洞穴遺跡

先島諸島・石垣島・白保竿根田原(しらほ・さおねたばる*1)洞穴遺跡(wiki・遺跡報告検索*2)のニュースには反応しておかなければならないでしょう。 やはりこのニュースは、地元の琉球新報などが詳しく、重点の違う記事が複数あった。 一番最初は、まとめ…

ニュースが溜まってた

どういう訳か、興味があったり関係あるニュースは、いくつも固まってやってくる。 いくつも溜まってしまったから、それをまとめて一気に片付けてしまおう。 まず、全部書き出しておく。 最初に、白保竿根田原(しらほさおねたばる)洞穴遺跡のニュース。 こ…

オーストロネシアの人々――謎のヌサンタオ編

今回から、太平洋とインド洋を股に掛けるオーストロネシアの人々の特集だ。 記事は何回かに適当に切り分けたいところ。 予告したチャム族の話もある。でも、話をオーストロネシア人の関係する地域全体(周辺語族も含む)に拡げよう。読んだ論文自体がそうい…

カミの遺伝学的解析――聖樹布と禁忌の民

そろそろ南方の話をしたい。そしてその流れで、以前D1b関連で見せた(この記事と別の直リンク)ADMIXTUREの説明もしよう。 しかしその前に面白い論文を紹介したい。これも南方の話だ。 今回の論文は海外の研究者が書いた物であり、日本の古代の知識には期待…

東北アジアのトナカイの民(似た名前の民族)

東北アジアやシベリアの話をいくつか書いておく。ずっと前にしてた、似た名前を持った民族、特にトナカイに関係する民族の話だ。 名前が似ていても同じ集団だとは限らない、というやつ。トナカイの話もこの同じ記事の頃から何度もしていた。 トナカイ(カリ…

アイヌADMIXTURE論文の続きと、アイヌについていろいろ

「D1bの進入ルートについて」の論文で、自分の読み込みと調査不足のため触れなかったADMIXTUREがある。 (また、今までに書いていたアイヌのY染色体ハプログループデータの比率を少し(D=87.2%が89.5%に)訂正しました。申し訳ない。*1) 問題は、どちらの図…

D1bの進入ルートについて――ADMIXTUREにも触れつつおさらい

縄文人・Y染色体ハプログループD1bが日本の南北どちらから入って来たのかについて、いくつか。 まず、今後詳しく説明する予定のADMIXTUREも、この判断と関係している。 実は、日本人と韓国人(及び漢民族など)のADMIXTUREは、違いはあるが大きな方向性は似…

三系統のY染色体ハプログループD1b+α(続き)

全体的な傾向をつかんだところで、もっと細かく地域的な傾向を見ましょう。 今回は最初から、C1a1も含めたβ版の内部比率を載せる。 ※2016/12/20 アイヌのデータを訂正。図と文章の一部も修正しました。 ※2018/3/10 県別のβ版データのD1b1a・C1a1やDの総数な…

三系統のY染色体ハプログループD1b+α

D1b詳細検証 C2について書いてたら(記事、どうしても長くなるよねやっぱり)、先に確認しておきたいことがあった。 それは、「D1bの中に、北から北海道ルートで日本へ入った者たちがいるのではないか?」という問題だ。 これを検証するために、先にまたD1b…

南太平洋バヌアツとトンガ、島民の祖先はアジア人

ニュース関係は時期を外すと書く機会がなくなるから書いておこう。 __10/8、忘れてたことと修正があるんで、少し直しました。男の子と女の子で性染色体の組み合わせが違うことを書き忘れてたり。 __10/12、最後のほうに、P・C1b2aなどの出てる地域と、…

ユーラシア東部およびアメリカ先住民の移住シナリオ

忘れないうちに、この東アジアを舞台とした移住の題材を片付けないと。 この前の時は染色体全比較の地図(ADMIXTURE)出したけど、こんなサイトもある。 http://admixturemap.paintmychromosomes.com/ 元の論文は A genetic atlas of human admixture histor…

世界最古の釣り針と、名前を覚えておくべき篠遠先生

沖縄サキタリ洞の話で、 こんな記事見かけたんですが。 そんなところツッコむんだ。でも釣り針にはこんなのもあるぞ。 File:MAP Expo Maori Hameçon 13012012 04.jpg Hei matau - Wikipedia, the free encyclopedia (マオリの釣り針) でも、それよりも…… …