知識探偵クエビコ

人類史・古代史・神話の謎を探ったり、迷宮に迷い込んだり……

遺伝学

遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1の由来はどこにある?(前編)

1.きっかけ 中国・遼寧省錦州市のLiaoningさんがY染色体を調べてC1、しかもどうもC1a1が出たようだ。 錦州市は渤海・遼東湾の北の端にある。 そして、こちらの記事にコメント付けてくれた。 Y染色体で探る日本人の起源 4-2.氷河期が終わるまでにやっ…

イヌは4万年前の単一起源か

イヌのニュースも反応しておこう。 結論としての意外性は(以前「オオカミ、ヒトに出会う」という記事をまとめてる自分としては)無い。また年代はあってもその場所は示さない。 しかし遺跡の骨を調べたり、データはたくさん揃えてる。(ただ、日本の犬がい…

日本人3554人のゲノムデータベース

日本人3554人のゲノムのデータベース(3.5KJPN)を、東北大学が作ったというニュースがあった。 ヒトゲノム、世界最大級のDBに 日本人特有の特徴発見:朝日新聞デジタル これはもちろん東北大学の公式プレスリリースがある。こっち読んだほうがいいで…

オーストロネシア――熱帯動植物文化の探求・聖樹カジノキ再び

次はカジノキ(Broussonetia papyrifera、クワ科*1コウゾ属。漢字で「榖」*2)の話をまたしよう。以前のカジノキ記事の続きだ。でも、ラピタ人とブタとニワトリにも触れる。 まずは、そのときの論文よりちょっとだけ前の2014年12月の論文をさらっと。 約8000…

オーストロネシア――熱帯動植物文化の探求・イネ

そろそろオーストロネシアの話に戻ろうかなと。思い出しておくと、前はこの記事(オーストロネシアの人々――謎のヌサンタオ編)だ。 文化的な話を中心に、遺伝学など他の学問も絡めてやります。 以前のイネやもっと以前のカジノキの話の続きとその他聖樹だと…

ミイラネタ――その後のナショナルジオグラフィック巡り

というか死体ネタというか。 少し前の物だが、遺伝子解析の、別のミイラネタを見つけた。 【遺伝】古代エジプト人のミイラのゲノム解析 | Nature Communications | Nature Research この論文の中で、Johannes Krauseたちの研究グループは、エジプト中部のア…

考古学的な遺伝証拠はどのぐらい古くまで残ってるものか?

まだ古人類学シリーズで、遺伝子証拠の可能性だとか残りやすさの話をします。 実際の考古学的遺物としての遺伝子は、どのぐらいまで古く残ってるものなのか? これも気になってた。 現在のヒトDNA最古の解読記録が、43万年前(スペイン・カルスト地形(石灰…

猿人はどこから「ヒト」なのか? (化石編後編)

今回はアウストラロピテクス以降。メインテーマは「猿人はどこからヒト属(Homo)なのか?」。 つまり――「ヒト属(Homo)の祖先はアウストラロピテクス以降のどれなのか」+「最初のヒト属はどれなのか」――が問題となる。 このヒト属こそが"human"の概念に関わる…

ネコは自ら家畜化した?

ニュースだからこちらを先に反応しておこう。 ネコのDNA研究です。「埋葬やミイラ化された古代のネコ230匹のDNAを分析した」そうで。 早速引用。(色つけは私) 原産地を出て世界に拡散した最初の野生ネコで、今日の飼いネコの祖先となったのは、リビアヤマ…

オーストロネシアの人々――謎のヌサンタオ編

今回から、太平洋とインド洋を股に掛けるオーストロネシアの人々の特集だ。 記事は何回かに適当に切り分けたいところ。 予告したチャム族の話もある。でも、話をオーストロネシア人の関係する地域全体(周辺語族も含む)に拡げよう。読んだ論文自体がそうい…

ADMIXTUREの図はどう見るか?

予告とは違うが、ADMIXTUREの解析の図が登場してくるし、やっぱりまとまった説明が必要らしい。以前からやるべきかと思っていたし、自分に理解のできた範囲でだが、説明を書いておこう。 まず最初に、ADMIXTUREとは何か? 集団をいくつかの近似した部分ごと…

カミの遺伝学的解析――聖樹布と禁忌の民

そろそろ南方の話をしたい。そしてその流れで、以前D1b関連で見せた(この記事と別の直リンク)ADMIXTUREの説明もしよう。 しかしその前に面白い論文を紹介したい。これも南方の話だ。 今回の論文は海外の研究者が書いた物であり、日本の古代の知識には期待…

東北アジアのトナカイの民(似た名前の民族)

東北アジアやシベリアの話をいくつか書いておく。ずっと前にしてた、似た名前を持った民族、特にトナカイに関係する民族の話だ。 名前が似ていても同じ集団だとは限らない、というやつ。トナカイの話もこの同じ記事の頃から何度もしていた。 トナカイ(カリ…

積み残しのアイヌやサハリンのお話

サハリンなどについて、前回書くのを忘れた、読んだweb資料をいくつか。 アイヌ文化振興・研究推進機構いろいろ情報があります。(いろいろありすぎて必要な情報を探すのは大変だけど) シリーズ 東アジアの中の日本の歴史〜中世・近世編〜 【第3回】オホー…

アイヌADMIXTURE論文の続きと、アイヌについていろいろ

「D1bの進入ルートについて」の論文で、自分の読み込みと調査不足のため触れなかったADMIXTUREがある。 (また、今までに書いていたアイヌのY染色体ハプログループデータの比率を少し(D=87.2%が89.5%に)訂正しました。申し訳ない。*1) 問題は、どちらの図…

「日本列島人形成の三段階渡来モデル」について

前回の最後で、渡来民を二段階に分ける説が出てるという話をした。 なお、今回の記事タイトルの三段階は、この新しい渡来民の二段階に、旧石器時代の最初の頃の渡来を一段階目に数えている。だから、合わせて三段階。 部分的には異なるが、大きな方向性はこ…

意外な出雲データと、文化の変移のお話

斎藤研究室の2016年の論文に、出雲のゲノムを解析したPCA(Principal Component Analysis.主成分分析)の画像があった。 Language diversity of the Japanese Archipelago and its relationship with human DNA diversity.(pdf) 意外にも、出雲の人々のほうが…

D1bの進入ルートについて――ADMIXTUREにも触れつつおさらい

縄文人・Y染色体ハプログループD1bが日本の南北どちらから入って来たのかについて、いくつか。 まず、今後詳しく説明する予定のADMIXTUREも、この判断と関係している。 実は、日本人と韓国人(及び漢民族など)のADMIXTUREは、違いはあるが大きな方向性は似…

三系統のY染色体ハプログループD1b+α(続き)

全体的な傾向をつかんだところで、もっと細かく地域的な傾向を見ましょう。 今回は最初から、C1a1も含めたβ版の内部比率を載せる。 ※2016/12/20 アイヌのデータを訂正。図と文章の一部も修正しました。 サンプル数がさらに少なくなるため、今回はβ版に頼らざ…

三系統のY染色体ハプログループD1b+α

D1b詳細検証 C2について書いてたら(記事、どうしても長くなるよねやっぱり)、先に確認しておきたいことがあった。 それは、「D1bの中に、北から北海道ルートで日本へ入った者たちがいるのではないか?」という問題だ。 これを検証するために、先にまたD1b…

南太平洋バヌアツとトンガ、島民の祖先はアジア人

ニュース関係は時期を外すと書く機会がなくなるから書いておこう。 __10/8、忘れてたことと修正があるんで、少し直しました。男の子と女の子で性染色体の組み合わせが違うことを書き忘れてたり。 __10/12、最後のほうに、P・C1b2aなどの出てる地域と、…

ユーラシア東部およびアメリカ先住民の移住シナリオ

忘れないうちに、この東アジアを舞台とした移住の題材を片付けないと。 この前の時は染色体全比較の地図(ADMIXTURE)出したけど、こんなサイトもある。 http://admixturemap.paintmychromosomes.com/ 元の論文は A genetic atlas of human admixture histor…

沖縄ルート続き

昨日の記事の後で気がついたことがあるんで続き。 沖縄の遺跡は、その年代に断絶があることを思い出したのよ。 沖縄県の歴史#先史時代 - Wikipedia 港川人の年代から、続く貝塚時代までの約1万2000年間の遺跡はほとんど発見されておらず、長らく空白期とされ…

ニュース1:8300年前の埋葬人骨を発掘 縄文人の生活実態解明へ

今「Y染色体中国出したし他も出さなきゃ」と思って準備しつつ、同時にいくつかの記事を書いてる。 そこに、またも無関係でない二つのニュースがありました。 まず最初。 こないだ記事にしたニュースと違って、今度は山の縄文人(縄文早期)で、DNA分析する…

モンゴロイド学説は公式に否定されなければならない

Y染色体ハプログループにおいて、日本とモンゴルなど(アルタイやバイカル湖周辺なども含む)の間で共通性を持っていて、モンゴロイドと関係すると考えられるのが、C2系統だった。 Dも可能性はあったが、結局モンゴルから中央アジアの領域には、日本のD1b…

「日本人のDNA、縄文人から12%受け継ぐ」というニュースについて

これ、思いっきり今書いてる内容と関係するところがある。 論文もサプルメントもちゃんと読んで、しかもいくつか調べなきゃならないこともあった。 まあ、よくあることだが、ニュースは、書いた記者の主観が入ってて、元と違ってる。 プレスリリースも論文も…

分岐年代でわかるY染色体ハプログループC

Y染色体ハプログループCの、分岐図と、年代と、それぞれのいる場所 ここで参考にしたのは……(2016/8/5付け、ということにしておく。書いてるうちに更新されて困ったわ) ISOGGの表、およびこの真ん中あたりにある地理分布(Geographical distribution)と、少…

アメリカ大陸移住海岸ルート説

気になるニュースがあった。 これは、今してる話と無関係でもない。 元の論文。本体は有料だが画像は普通に見ることができる。 http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature19085.html これは、証拠として、過去の植生を調べたところが…

今後の予定の変更

話を進める順番を、予定と変えることにした。 もちろん、モンゴロイド仮説の検証をするという主題は変わらない。 ヨーロッパで、シベリア経由でアメリカ組に繋がる話をたくさんしたんだから、このままシベリア方面に進んでいこう。 これは、形の上では、モン…

西方遺跡データのY染色体ハプログループ3

いつのまにか世界全体の人類史の謎の話に拡がってしまう。 西方遺跡データはこれで最後。今回はヨーロッパの話ばかりやります。

西方遺跡データのY染色体ハプログループ2

今回も西方の遺跡データ。 再び主な目的を確認する。 もともとの目的はモンゴロイド仮説の検証だ。 昔の時点で西にモンゴルのC2(旧C3)系統(もしくはその先祖の段階)がいないとわかれば、彼らは西回りの北方ルートでモンゴルに到達したわけではないことが…

西方遺跡データのY染色体ハプログループ1

ここから順番に片付けていこう。(だいたいミトコンドリアの逆の順番がよさそうだ) 過去のある時点での状況がわかれば、現在の状況は、より後の時代に変化したものだ、とわかる。 まず、目的を確認しておこう。 昔の時点で、西に、モンゴルのC2(旧C3)系統…

ミトコンドリアで探る人類史 目次

こんな順序です。 もうデータ引用も書けたはず。 ここで日本のオマケ 最後に こんな感じ。 今後も何か書いたら付け足します。

ミトコンドリア編 とりあえずのまとめ

Y染色体の話に進みたいので、ミトコンドリアに一旦きりを付けておきます。 ただし個別の話題は継続します。モンゴロイド問題をまとめるのも、アメリカ組と日本の関係を考える場合でも、ミトコンドリアもY染色体も一度に両方触れたほうがいいでしょう。新しい…

ミトコンドリア 西方遺跡データ

古い時代のヨーロッパからシベリアのデータを固め打ちで。 以前、モンゴルにもオマケがあると言ってたものの一つでもある。 おおまかに地域別(中欧・南欧・東欧からシベリア・最後は紀元前2000年のシルクロード)になっていて、どこも狩猟採集時代(新石器…

ミトコンドリアで探る人類史 インドとアラビア半島

これもデータは準備してたけどグラフ作ってなかった。 でも一緒に見たいよね? と思って、他の記事の書き足しやるとやっぱり時間がかかるので、その前に。 インドとタイと中国。 「族」は部族集団を調べたデータを意味する。ただしそれ以外も限定されないだ…

ミトコンドリアで探る人類史 アメリカ縦断編

同じテーマのグラフはもう用意してるんだから、先に全部出しておこうと思った。 並べて楽しむこともできるし。(自分も追い込める) グラフの北米南米は地理上の区分じゃなくて場所説明地図のため。縦に長いし、地図作るのめんどくさいから、元のある場合は…

ミトコンドリア編オマケ 極東N9bは日本が元で、しかもロシアの集団は新しかった?

ミトコンドリアハプログループNについての論文を読んでたら、語られてる内容と関係ない(論文本文で触れられない)が、日本人にとっては重要データがあった。 PLOS ONE: Carriers of Mitochondrial DNA Macrohaplogroup N Lineages Reached Australia aroun…

ミトコンドリアで探る人類史 東南アジア編

ついに東南アジアだ。覚悟はいいか? いちいち説明する気が起きないほど大量のデータ。 でもグラフにしてみたら迫力があって面白かったから、でかいまま載せる。 (右にあるのは語族名の略称とサンプル数) インドを中心とした大量の基本系統M。 Rも豊富で…

ミトコンドリアで探る人類史 日本・モンゴルなどアジア極東から北方

いきなり行きます。色の対応は前回と同じこれ。(表にも直接書き込んだ) だいたい東から順番。場所は付属地図を参照のこと。 日本は表の真ん中あたり。 ★マークは遺跡人骨のデータ。アイヌ江戸は江戸時代のアイヌ、オホーツク文化は5世紀から13世紀の北海道…

ミトコンドリアで探る人類史

でかいタイトルで。 いや、日本人の歩みをたどるにも、モンゴル帝国を語るにも、結局は世界の人類史をたどらなきゃならんのです。 モンゴルが遺伝的にどうなのかとか、説明もしないで歴史を語っても繋がりがわからないわけで。 でもあまりツッコみすぎるとY…

フローレス原人ふたたび

フローレス原人の新たな化石 Nature ハイライト:フローレス原人の第2の遺跡 | Nature | Nature Research フローレス原人の新しい化石が出て、論文が出てニュースになった。 海部さんだ。 右はkindle版 これで、小さなフローレス原人の祖先が、東南アジア由…

予告 モンゴロイド学説との直接対決

「モンゴロイド」及び北方ルートの根拠喪失と、予想以上に重要だった東南アジア C2(旧C3)を片付ける前に、というより、Oなどもっとややこしい今後の問題を迎える前に、東南アジア(中国とインドの一部を含む)の最新の情報をしっかり調べておかなきゃ…

イヌの起源 「オオカミ、ヒトに出会う」

最古の家畜 イヌ イヌは文句なく最古の家畜である。 そしてその起源は、家畜の中でも桁外れの数万年(もう一桁多い予測もある)という単位が出てくるほど古くまで遡ってしまう。 そしてその古さ故に、家畜としてのイヌの起源の追及は、人類の移住の歴史とも…

DNAを高密度データストレージに、マイクロソフトが実用化研究を本格化

なんだと。やっぱりやるのか。 ついでにヨーロッパの縄文人の親戚、La Branaの話まで書いてあったさ。青い目で、牛乳に含まれる酪酸を消化できなかった、というお話が。

Y染色体で探る日本人の起源 3.日本人の構成

日本人のY染色体ハプログループ構成 まずはデータをお見せしよう。 wikipediaの日本人にあるデータをそのままコピーしても面白くないため、元の論文の確認をしたついでに、別の論文からのデータ追加というついで以上のことをして合算データを作成した。 既…

Y染色体で探る日本人の起源 4-2.氷河期が終わるまでにやってきた人々2 C1

謎多きY染色体ハプログループC 謎だらけでレジェンド的なC1 やはり日本固有だが登場年代のよくわからない、縄文時代初頭かも知れないがひょっとするとD1bより古いかも知れない、C1a1(旧表記C1)の子孫も日本の男の約5%いる。 しかし5%と言っ…

Y染色体で探る日本人の起源 0.プロローグと案内

*1 私たち日本人のY染色体――男だけが持ち、男の民族移動を反映する――の研究は、非常に興味深い事実をあぶり出した。 日本人は、他のアジア人と全く異なった、日本固有の独特のY染色体を持っていたのだ。 遙か昔から日本列島にいた縄文人は、滅んでなどいな…

Y染色体で探る日本人の起源 4-1.氷河期が終わるまでにやってきた人々1 D

後期旧石器時代から日本列島にいるY染色体ハプログループD 日本人の男の三分の一強の多数派が、縄文時代どころかそれ以前の後期旧石器時代から、おそらく35000年ほど前から日本列島にいたY染色体ハプログループD集団の子孫である。 各地のY染色体D1b…

Y染色体で探る日本人の起源 4-0.まずは時代の定義

時代の定義 旧石器時代と縄文時代と弥生時代、そして最終氷期 まず、なるべくシンプルに時代定義の話をしておこう。(脱線したくなることだらけだが) 最初は旧石器時代である。これは日本列島に人類が登場してから土器を使用し始めるまでの時代を指す。 日…