知識探偵クエビコ

人類史・古代史・神話の謎を探ったり、迷宮に迷い込んだり……

遺伝学

中国古代文明側の可能性追求――遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?

つづきを予告していた記事です。 「Liaoningさんと東京の4人との分岐年代は5500年以上前を示唆するか*1」ということになると――その約5500年前あたりにC1a1が中国側から日本へ渡来した/中国側のどこかでC1a1が分岐した可能性はあり得るのか? なお今回の記事…

アンダマン諸島のY染色体ハプログループD系統の解析

前回の最後に書いた事の答えは、タイトルの通り。 Y-FullでDの分岐の根元に表れた人々の正体は、昔から知られていたがずっと未分類状態だった、アンダマン諸島のジャラワ族・オンゲ族だった。 https://www.yfull.com/tree/D/ このY-Fullのデータに、元の論文…

ニュース:現生人類、「出アフリカ」は一度だけではなく、約12万年前から始まっている

少し遅れたけど、わかり始めてたことを、現時点で学者がまとめた研究報告のニュースです。 今回は、このニュースと該当論文以外の話もする。 現生人類、「出アフリカ」は一度だけではなかった 研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News 【12月8日 AFP】人類が…

Liaoningさんと東京集団の分岐年代は5500年以上前―遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?

Liaoningさんの続報(コメント欄)です。(11/19、港川人など付け加えつつ少し修正) C1a1確定――遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある? - 知識探偵クエビコ 1、青海省德令哈市のC1-M8の情報について、中国の復旦大学は最初のSTRを…

C1a1確定――遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?

LiaoningさんのC1a1が確定し、YFullにも出ました。 YFull https://www.yfull.com/tree/C/ まだ"analysis in progress..."(分析中)ですが、これで安心して前に進めます。 YFullのC1a1にあるJPT(東京)四人分のデータを全部見つけたから、付け加えたC1a1表…

遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?(中編補遺)

まさかの中編補遺。 liaoningさんが中編にコメントを付けてくれた。そこで、新しい時代についても追加で、考えを整理する意味もあってまとめておく。 ただし、おそらくliaoningさん(liaoningブログ参照)は新しい分岐年代ではない。 まず、常染色体を調べる…

遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?(中編)

今回は、歴史的可能性の検証だ。 まず最初に、結論に近い衝撃的な話を先に書いてしまおう。 自分としては、このLiaoningさんの件は、後の三燕(前燕・後燕・北燕)まで含めて、鮮卑に関係している可能性は大いにある、と考える。 実はこれは、鮮卑・三燕と関…

遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?(前編)

1.きっかけ 中国・遼寧省錦州市のLiaoningさんがY染色体を調べてC1、しかもどうもC1a1が出たようだ。 錦州市は渤海・遼東湾の北の端にある。 そして、こちらの記事にコメント付けてくれた。 Y染色体で探る日本人の起源 4-2.氷河期が終わるまでにやっ…

イヌは4万年前の単一起源か

イヌのニュースも反応しておこう。 結論としての意外性は(以前「オオカミ、ヒトに出会う」という記事をまとめてる自分としては)無い。また年代はあってもその場所は示さない。 しかし遺跡の骨を調べたり、データはたくさん揃えてる。(ただ、日本の犬がい…

日本人3554人のゲノムデータベース

日本人3554人のゲノムのデータベース(3.5KJPN)を、東北大学が作ったというニュースがあった。 ヒトゲノム、世界最大級のDBに 日本人特有の特徴発見:朝日新聞デジタル これはもちろん東北大学の公式プレスリリースがある。こっち読んだほうがいいで…

オーストロネシア――熱帯動植物文化の探求・聖樹カジノキ再び

次はカジノキ(Broussonetia papyrifera、クワ科*1コウゾ属。漢字で「榖」*2)の話をまたしよう。以前のカジノキ記事の続きだ。でも、ラピタ人とブタとニワトリにも触れる。 まずは、そのときの論文よりちょっとだけ前の2014年12月の論文をさらっと。 約8000…

オーストロネシア――熱帯動植物文化の探求・イネ

そろそろオーストロネシアの話に戻ろうかなと。思い出しておくと、前はこの記事(オーストロネシアの人々――謎のヌサンタオ編)だ。 文化的な話を中心に、遺伝学など他の学問も絡めてやります。 以前のイネやもっと以前のカジノキの話の続きとその他聖樹だと…

ミイラネタ――その後のナショナルジオグラフィック巡り

というか死体ネタというか。 少し前の物だが、遺伝子解析の、別のミイラネタを見つけた。 【遺伝】古代エジプト人のミイラのゲノム解析 | Nature Communications | Nature Research この論文の中で、Johannes Krauseたちの研究グループは、エジプト中部のア…

考古学的な遺伝証拠はどのぐらい古くまで残ってるものか?

まだ古人類学シリーズで、遺伝子証拠の可能性だとか残りやすさの話をします。 実際の考古学的遺物としての遺伝子は、どのぐらいまで古く残ってるものなのか? これも気になってた。 現在のヒトDNA最古の解読記録が、43万年前(スペイン・カルスト地形(石灰…

猿人はどこから「ヒト」なのか? (化石編後編)

今回はアウストラロピテクス以降。メインテーマは「猿人はどこからヒト属(Homo)なのか?」。 つまり――「ヒト属(Homo)の祖先はアウストラロピテクス以降のどれなのか」+「最初のヒト属はどれなのか」――が問題となる。 このヒト属こそが"human"の概念に関わる…

ネコは自ら家畜化した?

ニュースだからこちらを先に反応しておこう。 ネコのDNA研究です。「埋葬やミイラ化された古代のネコ230匹のDNAを分析した」そうで。 早速引用。(色つけは私) 原産地を出て世界に拡散した最初の野生ネコで、今日の飼いネコの祖先となったのは、リビアヤマ…

オーストロネシアの人々――謎のヌサンタオ編

今回から、太平洋とインド洋を股に掛けるオーストロネシアの人々の特集だ。 記事は何回かに適当に切り分けたいところ。 予告したチャム族の話もある。でも、話をオーストロネシア人の関係する地域全体(周辺語族も含む)に拡げよう。読んだ論文自体がそうい…

ADMIXTUREの図はどう見るか?

予告とは違うが、ADMIXTUREの解析の図が登場してくるし、やっぱりまとまった説明が必要らしい。以前からやるべきかと思っていたし、自分に理解のできた範囲でだが、説明を書いておこう。 まず最初に、ADMIXTUREとは何か? 集団をいくつかの近似した部分ごと…

カミの遺伝学的解析――聖樹布と禁忌の民

そろそろ南方の話をしたい。そしてその流れで、以前D1b関連で見せた(この記事と別の直リンク)ADMIXTUREの説明もしよう。 しかしその前に面白い論文を紹介したい。これも南方の話だ。 今回の論文は海外の研究者が書いた物であり、日本の古代の知識には期待…

東北アジアのトナカイの民(似た名前の民族)

東北アジアやシベリアの話をいくつか書いておく。ずっと前にしてた、似た名前を持った民族、特にトナカイに関係する民族の話だ。 名前が似ていても同じ集団だとは限らない、というやつ。トナカイの話もこの同じ記事の頃から何度もしていた。 トナカイ(カリ…

積み残しのアイヌやサハリンのお話

サハリンなどについて、前回書くのを忘れた、読んだweb資料をいくつか。 アイヌ文化振興・研究推進機構いろいろ情報があります。(いろいろありすぎて必要な情報を探すのは大変だけど) シリーズ 東アジアの中の日本の歴史〜中世・近世編〜 【第3回】オホー…

アイヌADMIXTURE論文の続きと、アイヌについていろいろ

「D1bの進入ルートについて」の論文で、自分の読み込みと調査不足のため触れなかったADMIXTUREがある。 (また、今までに書いていたアイヌのY染色体ハプログループデータの比率を少し(D=87.2%が89.5%に)訂正しました。申し訳ない。*1) 問題は、どちらの図…

「日本列島人形成の三段階渡来モデル」について

前回の最後で、渡来民を二段階に分ける説が出てるという話をした。 なお、今回の記事タイトルの三段階は、この新しい渡来民の二段階に、旧石器時代の最初の頃の渡来を一段階目に数えている。だから、合わせて三段階。 部分的には異なるが、大きな方向性はこ…

意外な出雲データと、文化の変移のお話

斎藤研究室の2016年の論文に、出雲のゲノムを解析したPCA(Principal Component Analysis.主成分分析)の画像があった。 Language diversity of the Japanese Archipelago and its relationship with human DNA diversity.(pdf) 意外にも、出雲の人々のほうが…

D1bの進入ルートについて――ADMIXTUREにも触れつつおさらい

縄文人・Y染色体ハプログループD1bが日本の南北どちらから入って来たのかについて、いくつか。 まず、今後詳しく説明する予定のADMIXTUREも、この判断と関係している。 実は、日本人と韓国人(及び漢民族など)のADMIXTUREは、違いはあるが大きな方向性は似…

三系統のY染色体ハプログループD1b+α(続き)

全体的な傾向をつかんだところで、もっと細かく地域的な傾向を見ましょう。 今回は最初から、C1a1も含めたβ版の内部比率を載せる。 ※2016/12/20 アイヌのデータを訂正。図と文章の一部も修正しました。 サンプル数がさらに少なくなるため、今回はβ版に頼らざ…

三系統のY染色体ハプログループD1b+α

D1b詳細検証 C2について書いてたら(記事、どうしても長くなるよねやっぱり)、先に確認しておきたいことがあった。 それは、「D1bの中に、北から北海道ルートで日本へ入った者たちがいるのではないか?」という問題だ。 これを検証するために、先にまたD1b…

南太平洋バヌアツとトンガ、島民の祖先はアジア人

ニュース関係は時期を外すと書く機会がなくなるから書いておこう。 __10/8、忘れてたことと修正があるんで、少し直しました。男の子と女の子で性染色体の組み合わせが違うことを書き忘れてたり。 __10/12、最後のほうに、P・C1b2aなどの出てる地域と、…

ユーラシア東部およびアメリカ先住民の移住シナリオ

忘れないうちに、この東アジアを舞台とした移住の題材を片付けないと。 この前の時は染色体全比較の地図(ADMIXTURE)出したけど、こんなサイトもある。 http://admixturemap.paintmychromosomes.com/ 元の論文は A genetic atlas of human admixture histor…

沖縄ルート続き

昨日の記事の後で気がついたことがあるんで続き。 沖縄の遺跡は、その年代に断絶があることを思い出したのよ。 沖縄県の歴史#先史時代 - Wikipedia 港川人の年代から、続く貝塚時代までの約1万2000年間の遺跡はほとんど発見されておらず、長らく空白期とされ…