Y染色体で探る日本人の起源 0.プロローグと案内
私たち日本人のY染色体――男だけが持ち、男の民族移動を反映する――の研究は、非常に興味深い事実をあぶり出した。
日本人は、他のアジア人と全く異なった、日本固有の独特のY染色体を持っていたのだ。
遙か昔から日本列島にいた縄文人は、滅んでなどいなかった。縄文人は当たり前に現代でも生き残っているのだ。
いや、実はこれは正確な表現ではない。
日本人は、縄文時代どころか、さらに遡る後期旧石器時代から日本列島にいた人々の血を引いていたのである。
しかもこれは、わずかに生き残ってるだとか少数民族だとかいう話ではない。
私たち日本人の男の、まずは少なくとも三分の一強の多数派は、後期旧石器時代から日本列島にいた人々の子孫に当たる。
そしてそこにさらに縄文時代の移民(縄文初期以外の移民は遺伝的に弥生人に近く、弥生人との定義問題あり)が付け加わり、この移民まで含めて縄文人は成立していたわけだ。つまり既に縄文人も混血だったのである。
しかも話はまだこれで終わりではない。
後期旧石器時代からの日本人は、今までの学説では説明できないほど多く、しかも大陸からの入り口に当たるはずの九州にも、本州などと比べてもそれほど大差なく残っており、予測から導かれるほどの差がないのだ。
しかもここには、弥生時代に入る前からの縄文移民(遺伝的には弥生人に近い)も加わっているのである。
すると、二十一世紀に入ってもなお普通に語られている、単純な「弥生人侵略シナリオ」では不具合が生じてしまう。
どうも今現在に残る比率分布を説明しきれない。
状況を説明することのできる、新しいシナリオが必要なのだ。
『Y染色体で探る日本人の起源』 全体案内
0.プロローグと案内は『Y染色体で探る日本人の起源』全体のプロローグと案内(目次)になっている。
(今いるのはココ!)
1.知識編で、Y染色体など必要な知識の説明をする。だからこの知識編は、だいたいわかる人および先が早く知りたい人はざっと読み飛ばしてもらって構わない。わからないことは後で戻って必要なところだけ読み直すこともできる。
2.世界のY染色体で、そこで全体の分類と大まかな世界の状況を書く。
3.日本人の構成では、実際に現在の日本人の構成がどうなっているか、苦労して作った地方別の表をお見せしよう。
4.氷河期が終わるまでにやってきた人々と5.その後やってきた人々では、人々の移住の歴史と過程を説明する。
(残りはただいま制作中! 近日公開)
もちろん、これらの問題にはまだまだ不明なことも議論となることもある。そのため時には私自身の判断や予測を差し挟みつつ、順番に説明していこう。
6.混合民仮説では、私の考えた、現在の状況をより妥当に説明することのできる日本人形成シナリオを語ろう。
(ただいま制作中! 近日公開)
内容と関係する、付録的な記事も書いている。
*1:この写真Waseda_Studentsはここからhttps://www.flickr.com/photos/library_of_congress/15428635655/