知識探偵クエビコ

人類史・古代史・神話の謎を探ったり、迷宮に迷い込んだり……

2016-01-01から1年間の記事一覧

東北アジアのトナカイの民(似た名前の民族)

東北アジアやシベリアの話をいくつか書いておく。ずっと前にしてた、似た名前を持った民族、特にトナカイに関係する民族の話だ。 名前が似ていても同じ集団だとは限らない、というやつ。トナカイの話もこの同じ記事の頃から何度もしていた。 トナカイ(カリ…

積み残しのアイヌやサハリンのお話

サハリンなどについて、前回書くのを忘れた、読んだweb資料をいくつか。 アイヌ文化振興・研究推進機構いろいろ情報があります。(いろいろありすぎて必要な情報を探すのは大変だけど) シリーズ 東アジアの中の日本の歴史〜中世・近世編〜 【第3回】オホー…

アイヌADMIXTURE論文の続きと、アイヌについていろいろ

「D1bの進入ルートについて」の論文で、自分の読み込みと調査不足のため触れなかったADMIXTUREがある。 (また、今までに書いていたアイヌのY染色体ハプログループデータの比率を少し(D=87.2%が89.5%に)訂正しました。申し訳ない。*1) 問題は、どちらの図…

「日本列島人形成の三段階渡来モデル」について

前回の最後で、渡来民を二段階に分ける説が出てるという話をした。 なお、今回の記事タイトルの三段階は、この新しい渡来民の二段階に、旧石器時代の最初の頃の渡来を一段階目に数えている。だから、合わせて三段階。 部分的には異なるが、大きな方向性はこ…

意外な出雲データと、文化の変移のお話

斎藤研究室の2016年の論文に、出雲のゲノムを解析したPCA(Principal Component Analysis.主成分分析)の画像があった。 Language diversity of the Japanese Archipelago and its relationship with human DNA diversity.(pdf) 意外にも、出雲の人々のほうが…

D1bの進入ルートについて――ADMIXTUREにも触れつつおさらい

縄文人・Y染色体ハプログループD1bが日本の南北どちらから入って来たのかについて、いくつか。 まず、今後詳しく説明する予定のADMIXTUREも、この判断と関係している。 実は、日本人と韓国人(及び漢民族など)のADMIXTUREは、違いはあるが大きな方向性は似…

記事を金銭化する手段はないものか

ところで、記事を買ってくれたり、どこかに書かせてくれる人はいないですかね? 論文読んだり手間がかかることも多くて、どこかで多少でも対価が発生してくれないと、時間と金銭的に続けるのが難しい。 それとも、こういう記事を書いていても成立するような…

術式の論理――祟りに対する怖れと、祭祀に対する信頼

前回は、歴史記録の記述、及び、祭祀の問題に踏み込んだため、付け足し。 遺伝学とか生物学じゃないから、基礎的なところは説明が必要だ。 祭祀とか、呪術的宗教的な儀式には、もちろんそれぞれの論理がある。 その術式の論理を踏み外すような想定は、やはり…

三系統のY染色体ハプログループD1b+α(続き)

全体的な傾向をつかんだところで、もっと細かく地域的な傾向を見ましょう。 今回は最初から、C1a1も含めたβ版の内部比率を載せる。 ※2016/12/20 アイヌのデータを訂正。図と文章の一部も修正しました。 ※2018/3/10 県別のβ版データのD1b1a・C1a1やDの総数な…

三系統のY染色体ハプログループD1b+α

D1b詳細検証 C2について書いてたら(記事、どうしても長くなるよねやっぱり)、先に確認しておきたいことがあった。 それは、「D1bの中に、北から北海道ルートで日本へ入った者たちがいるのではないか?」という問題だ。 これを検証するために、先にまたD1b…

南太平洋バヌアツとトンガ、島民の祖先はアジア人

ニュース関係は時期を外すと書く機会がなくなるから書いておこう。 __10/8、忘れてたことと修正があるんで、少し直しました。男の子と女の子で性染色体の組み合わせが違うことを書き忘れてたり。 __10/12、最後のほうに、P・C1b2aなどの出てる地域と、…

ユーラシア東部およびアメリカ先住民の移住シナリオ

忘れないうちに、この東アジアを舞台とした移住の題材を片付けないと。 この前の時は染色体全比較の地図(ADMIXTURE)出したけど、こんなサイトもある。 http://admixturemap.paintmychromosomes.com/ 元の論文は A genetic atlas of human admixture histor…

世界最古の釣り針と、名前を覚えておくべき篠遠先生

沖縄サキタリ洞の話で、 こんな記事見かけたんですが。 そんなところツッコむんだ。でも釣り針にはこんなのもあるぞ。 File:MAP Expo Maori Hameçon 13012012 04.jpg Hei matau - Wikipedia, the free encyclopedia (マオリの釣り針) でも、それよりも…… …

武器による傷のある遺跡人骨のお話

もう一つ気になったニュース。 西欧人が殺したのかと思ったら、アボリジニ同士の争いではないかというお話。 これ読んで、思い出した日本の論文がある。 受傷人骨からみた縄文の争い http://r-cube.ritsumei.ac.jp/handle/10367/5261 まるで科捜研のようで面…

沖縄ルート続き

昨日の記事の後で気がついたことがあるんで続き。 沖縄の遺跡は、その年代に断絶があることを思い出したのよ。 沖縄県の歴史#先史時代 - Wikipedia 港川人の年代から、続く貝塚時代までの約1万2000年間の遺跡はほとんど発見されておらず、長らく空白期とされ…

日本人祖先の航海再現 沖縄ルート検証へ

またニュース。 日本人祖先の航海再現 「沖縄ルート」検証へ国立科学博物館が計画 http://mainichi.jp/articles/20160922/ddm/016/040/002000c また、やるってことです。 以前「失敗」したときは、どうなるんだと思ってるうちに書くタイミングを無くしてしま…

ニュース2:世界最古の釣り針、沖縄の洞窟で発見

今度は沖縄のサキタリ洞窟から出た世界最古の釣り針。 英語のタイトルは、World's oldest fish hooks found in Japanese island cave. 論文、探してますぜ。 タイトルにされてるのは、この遺跡がより古くまで(35000年から30000年前)遡って、航海技術の証拠…

ニュース1:8300年前の埋葬人骨を発掘 縄文人の生活実態解明へ

今「Y染色体中国出したし他も出さなきゃ」と思って準備しつつ、同時にいくつかの記事を書いてる。 そこに、またも無関係でない二つのニュースがありました。 まず最初。 こないだ記事にしたニュースと違って、今度は山の縄文人(縄文早期)で、DNA分析する…

モンゴロイド学説は公式に否定されなければならない

Y染色体ハプログループにおいて、日本とモンゴルなど(アルタイやバイカル湖周辺なども含む)の間で共通性を持っていて、モンゴロイドと関係すると考えられるのが、C2系統だった。 Dも可能性はあったが、結局モンゴルから中央アジアの領域には、日本のD1b…

「日本人のDNA、縄文人から12%受け継ぐ」というニュースについて

これ、思いっきり今書いてる内容と関係するところがある。 論文もサプルメントもちゃんと読んで、しかもいくつか調べなきゃならないこともあった。 まあ、よくあることだが、ニュースは、書いた記者の主観が入ってて、元と違ってる。 プレスリリースも論文も…

分岐年代でわかるY染色体ハプログループC

Y染色体ハプログループCの、分岐図と、年代と、それぞれのいる場所 ここで参考にしたのは……(2016/8/5付け、ということにしておく。書いてるうちに更新されて困ったわ) ISOGGの表、およびこの真ん中あたりにある地理分布(Geographical distribution)と、少…

アメリカ大陸移住海岸ルート説

気になるニュースがあった。 これは、今してる話と無関係でもない。 元の論文。本体は有料だが画像は普通に見ることができる。 http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature19085.html これは、証拠として、過去の植生を調べたところが…

今後の予定の変更

話を進める順番を、予定と変えることにした。 もちろん、モンゴロイド仮説の検証をするという主題は変わらない。 ヨーロッパで、シベリア経由でアメリカ組に繋がる話をたくさんしたんだから、このままシベリア方面に進んでいこう。 これは、形の上では、モン…

中国紀元前1920年の洪水証拠

米科学誌サイエンス(Science)に発表された研究結果によると、大洪水が発生したのはこれまで考えられてきたよりも数百年遅い紀元前1920年。これは、禹(Yu)王による夏王朝樹立の時期が通説よりも遅かったことを意味し、この発見により歴史が書き換えられる…

西方遺跡データのY染色体ハプログループ3

いつのまにか世界全体の人類史の謎の話に拡がってしまう。 西方遺跡データはこれで最後。今回はヨーロッパの話ばかりやります。

西方遺跡データのY染色体ハプログループ2

今回も西方の遺跡データ。 再び主な目的を確認する。 もともとの目的はモンゴロイド仮説の検証だ。 昔の時点で西にモンゴルのC2(旧C3)系統(もしくはその先祖の段階)がいないとわかれば、彼らは西回りの北方ルートでモンゴルに到達したわけではないことが…

西方遺跡データのY染色体ハプログループ1

ここから順番に片付けていこう。(だいたいミトコンドリアの逆の順番がよさそうだ) 過去のある時点での状況がわかれば、現在の状況は、より後の時代に変化したものだ、とわかる。 まず、目的を確認しておこう。 昔の時点で、西に、モンゴルのC2(旧C3)系統…

ミトコンドリアで探る人類史 目次

こんな順序です。 もうデータ引用も書けたはず。 ここで日本のオマケ 最後に こんな感じ。 今後も何か書いたら付け足します。

ミトコンドリア編 とりあえずのまとめ

Y染色体の話に進みたいので、ミトコンドリアに一旦きりを付けておきます。 ただし個別の話題は継続します。モンゴロイド問題をまとめるのも、アメリカ組と日本の関係を考える場合でも、ミトコンドリアもY染色体も一度に両方触れたほうがいいでしょう。新しい…

ミトコンドリア 西方遺跡データ

古い時代のヨーロッパからシベリアのデータを固め打ちで。 以前、モンゴルにもオマケがあると言ってたものの一つでもある。 おおまかに地域別(中欧・南欧・東欧からシベリア・最後は紀元前2000年のシルクロード)になっていて、どこも狩猟採集時代(新石器…