知識探偵クエビコ

人類史・古代史・神話の謎を探ったり、迷宮に迷い込んだり……

2017-01-01から1年間の記事一覧

『核DNA解析でたどる日本人の源流』斎藤成也

遅ればせながら。 出てることに気づいた瞬間に売り切れてた。つまり出版社の予想より売れたわけだ。 核DNA解析でたどる 日本人の源流 作者: 斎藤成也 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2017/10/21 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブ…

中国古代文明側の可能性追求――遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?

つづきを予告していた記事です。 「Liaoningさんと東京の4人との分岐年代は5500年以上前を示唆するか*1」ということになると――その約5500年前あたりにC1a1が中国側から日本へ渡来した/中国側のどこかでC1a1が分岐した可能性はあり得るのか? なお今回の記事…

アンダマン諸島のY染色体ハプログループD系統の解析

前回の最後に書いた事の答えは、タイトルの通り。 2018/4/3追記。Y-Full見たら、日本のD-M64.1の前側にアンダマン諸島の方々が来てた。ということは、今後日本のD1b-M64.1は、少なくとも一つ伸びてD1b1かD1b2ぐらいになるでしょう。 Y-FullでDの分岐の根元に…

ニュース:現生人類、「出アフリカ」は一度だけではなく、約12万年前から始まっている

少し遅れたけど、わかり始めてたことを、現時点で学者がまとめた研究報告のニュースです。 今回は、このニュースと該当論文以外の話もする。 現生人類、「出アフリカ」は一度だけではなかった 研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News 【12月8日 AFP】人類が…

檀石槐の倭人の話―遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?

壱岐の原の辻遺跡で遼東系銅釧が出土し、時代も1世紀頃*1と古かった――となると、まだ正式に説明してなかったことを、ちゃんと説明・検討しておく必要があるだろう。 それは、2世紀末の鮮卑の檀石槐、『後漢書』烏桓鮮卑列傳の「倭人」千餘家の話だ。 種眾日…

ほぼ完全な弥生期の人骨出土 佐世保市・高島「宮の本遺跡」発掘調査

このニュースに反応しておこう。これも最近の海人話と無関係ではないのだ。 場所は長崎県の西海岸、九十九島の中にある高島(佐世保市高島町)の宮の本遺跡(長崎県公式・佐世保市公式に図や写真がある。縄文時代草創期から古墳時代の複合遺跡)。 ここは旧…

原の辻遺跡で国内初の遼東系銅釧(くしろ)(腕輪)が出土

関係あるかも知れないニュース。 なんと期待より少し古いお話。 長崎新聞ホームページ:【県内トピックス】原の辻で国内初の腕輪出土 (11月28日) 県埋蔵文化財センターは27日、壱岐市の国指定特別史跡「原の辻遺跡」で2007年度に発掘した青銅製品が…

Liaoningさんと東京集団の分岐年代は5500年以上前とされた―遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?

Liaoningさんの続報(コメント欄)です。 11/19、港川人など付け加えつつ少し修正 2018/4/3現在、Y-Fullの年代は5100年(95%の確率で7100年~3600年前の間)となっています。今後も年代値は修整が入ると思っておいたほうがいいでしょう。(タイトルも過去形…

C1a1確定――遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?

LiaoningさんのC1a1が確定し、YFullにも出ました。 YFull https://www.yfull.com/tree/C/ まだ"analysis in progress..."(分析中)ですが、これで安心して前に進めます。 YFullのC1a1にあるJPT(東京)四人分のデータを全部見つけたから、付け加えたC1a1表…

遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?(中編補遺)

まさかの中編補遺。 liaoningさんが中編にコメントを付けてくれた。そこで、新しい時代についても追加で、考えを整理する意味もあってまとめておく。 ただし、おそらくliaoningさん(liaoningブログ参照)は新しい分岐年代ではない。 まず、常染色体を調べる…

遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?(中編)

今回は、歴史的可能性の検証だ。 まず最初に、結論に近い衝撃的な話を先に書いてしまおう。 自分としては、このLiaoningさんの件は、後の三燕(前燕・後燕・北燕)まで含めて、鮮卑に関係している可能性は大いにある、と考える。 実はこれは、鮮卑・三燕と関…

スマトラ島でも73,000~63,000年前の化石発見――続報:ヒトが初めてオーストラリアに到達したのは約65,000年前だった

スマトラ島で重要な化石の発見があった。これは前々回のオーストラリアの発見に続くニュースでもある。 【考古学】現生人類のインドネシア到達の歴史を書き換える化石の発見 | Nature | Nature Research 現生人類がインドネシアのスマトラ島に到達したのは、…

遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?(前編)

1.きっかけ 中国・遼寧省錦州市のLiaoningさんがY染色体を調べてC1、しかもどうもC1a1が出たようだ。 錦州市は渤海・遼東湾の北の端にある。 そして、こちらの記事にコメント付けてくれた。 Y染色体で探る日本人の起源 4-2.氷河期が終わるまでにやっ…

ヒトが初めてオーストラリアに到達したのは約65,000年前だった

出アフリカにも関わる重要なニュースです。 必ず海を越えていくことになるオーストラリア移住ルートで、いままでより古い年代が出て、またトバ・カタストロフに近づいた。 【考古学】ヒトが初めてオーストラリアに到達したのは約65,000年前だった | Nature |…

イヌは4万年前の単一起源か

イヌのニュースも反応しておこう。 結論としての意外性は(以前「オオカミ、ヒトに出会う」という記事をまとめてる自分としては)無い。また年代はあってもその場所は示さない。 しかし遺跡の骨を調べたり、データはたくさん揃えてる。(ただ、日本の犬がい…

日本人3554人のゲノムデータベース

日本人3554人のゲノムのデータベース(3.5KJPN)を、東北大学が作ったというニュースがあった。 ヒトゲノム、世界最大級のDBに 日本人特有の特徴発見:朝日新聞デジタル これはもちろん東北大学の公式プレスリリースがある。こっち読んだほうがいいで…

オーストロネシア――熱帯動植物文化の探求・聖樹カジノキ再び

次はカジノキ(Broussonetia papyrifera、クワ科*1コウゾ属。漢字で「榖」*2)の話をまたしよう。以前のカジノキ記事の続きだ。でも、ラピタ人とブタとニワトリにも触れる。 まずは、そのときの論文よりちょっとだけ前の2014年12月の論文をさらっと。 約8000…

オーストロネシア――熱帯動植物文化の探求・イネ

そろそろオーストロネシアの話に戻ろうかなと。思い出しておくと、前はこの記事(オーストロネシアの人々――謎のヌサンタオ編)だ。 文化的な話を中心に、遺伝学など他の学問も絡めてやります。 以前のイネやもっと以前のカジノキの話の続きとその他聖樹だと…

原発事故は予見できたか?

これだけはどうしても言わなければならない。 予見できなかったという考えは、完全に論理が転倒している。 一方、首藤(しゅとう)伸夫・東北大名誉教授(津波工学)は「津波が起きた後で、予見できたと言うのは簡単」と、確証を持って予見するのは難しかっ…

ミイラネタ――その後のナショナルジオグラフィック巡り

というか死体ネタというか。 少し前の物だが、遺伝子解析の、別のミイラネタを見つけた。 【遺伝】古代エジプト人のミイラのゲノム解析 | Nature Communications | Nature Research この論文の中で、Johannes Krauseたちの研究グループは、エジプト中部のア…

考古学的な遺伝証拠はどのぐらい古くまで残ってるものか?

まだ古人類学シリーズで、遺伝子証拠の可能性だとか残りやすさの話をします。 実際の考古学的遺物としての遺伝子は、どのぐらいまで古く残ってるものなのか? これも気になってた。 現在のヒトDNA最古の解読記録が、43万年前(スペイン・カルスト地形(石灰…

猿人はどこから「ヒト」なのか? (化石編後編)

今回はアウストラロピテクス以降。メインテーマは「猿人はどこからヒト属(Homo)なのか?」。 つまり――「ヒト属(Homo)の祖先はアウストラロピテクス以降のどれなのか」+「最初のヒト属はどれなのか」――が問題となる。 このヒト属こそが"human"の概念に関わる…

ネコは自ら家畜化した?

ニュースだからこちらを先に反応しておこう。 ネコのDNA研究です。「埋葬やミイラ化された古代のネコ230匹のDNAを分析した」そうで。 早速引用。(色つけは私) 原産地を出て世界に拡散した最初の野生ネコで、今日の飼いネコの祖先となったのは、リビアヤマ…

類人猿はどこから「ヒト」なのか? (化石編前編)

今回は、実は分類より先に書き始めてた化石編だ。やっぱり長いんで途中で分けよう。 次の図が、ヒト科(hominidae)以下の化石も含んだ分岐図(wikipediaより)。 ただし、まだ意見の分かれてる部分(ヒト属homoがどこから分岐したのか、など各所)も多い。自分…

類人猿はどこから「ヒト」なのか? (分類編)

今回は、グレコピテクスのニュースの続きで、類人猿のまとめをやる。 自分もこの段階は今まで記事にしてなくて、知識のアップデートも整理もしてなかった。ちょうどいい機会だ。 ただし別のニュースが飛び込んできたから触れておこう。 今度の「人類の起源」…

松帆銅鐸の年代

松帆銅鐸には反応せねばなるまい。 ただし、問題点を指摘させていただく。 7個の銅鐸のうち3個と、その内部につられていた「舌(ぜつ)」2本に付着していた植物片8点を、専門業者に依頼して分析。このうち4号銅鐸とその舌から採取された4点が紀元前4…

類人猿グレコピテクスはヒトなのか?

類人猿グレコピテクス・フレイベルギ(Graecopithecus freybergi)は、ヒトとチンパンジーが分かれた直後の、最初の人類(ヒト)ではないのか、というニュース。 記事ではグラエコピテクス・フレイベルギ、となってるが、Graecoはグレコローマンのグレコでギ…

白保竿根田原洞穴遺跡

先島諸島・石垣島・白保竿根田原(しらほ・さおねたばる*1)洞穴遺跡(wiki・遺跡報告検索*2)のニュースには反応しておかなければならないでしょう。 やはりこのニュースは、地元の琉球新報などが詳しく、重点の違う記事が複数あった。 一番最初は、まとめ…

ニュースが溜まってた

どういう訳か、興味があったり関係あるニュースは、いくつも固まってやってくる。 いくつも溜まってしまったから、それをまとめて一気に片付けてしまおう。 まず、全部書き出しておく。 最初に、白保竿根田原(しらほさおねたばる)洞穴遺跡のニュース。 こ…

オーストロネシアの人々――謎のヌサンタオ編

今回から、太平洋とインド洋を股に掛けるオーストロネシアの人々の特集だ。 記事は何回かに適当に切り分けたいところ。 予告したチャム族の話もある。でも、話をオーストロネシア人の関係する地域全体(周辺語族も含む)に拡げよう。読んだ論文自体がそうい…