知識探偵クエビコ

人類史・古代史・神話の謎を探ったり、迷宮に迷い込んだり……

古代史

中国古代文明側の可能性追求――遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?

つづきを予告していた記事です。 「Liaoningさんと東京の4人との分岐年代は5500年以上前を示唆するか*1」ということになると――その約5500年前あたりにC1a1が中国側から日本へ渡来した/中国側のどこかでC1a1が分岐した可能性はあり得るのか? なお今回の記事…

檀石槐の倭人の話―遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?

壱岐の原の辻遺跡で遼東系銅釧が出土し、時代も1世紀頃*1と古かった――となると、まだ正式に説明してなかったことを、ちゃんと説明・検討しておく必要があるだろう。 それは、2世紀末の鮮卑の檀石槐、『後漢書』烏桓鮮卑列傳の「倭人」千餘家の話だ。 種眾日…

原の辻遺跡で国内初の遼東系銅釧(くしろ)(腕輪)が出土

関係あるかも知れないニュース。 なんと期待より少し古いお話。 長崎新聞ホームページ:【県内トピックス】原の辻で国内初の腕輪出土 (11月28日) 県埋蔵文化財センターは27日、壱岐市の国指定特別史跡「原の辻遺跡」で2007年度に発掘した青銅製品が…

遼寧省錦州市のY染色体ハプログループC1a1の由来はどこにある?(中編)

今回は、歴史的可能性の検証だ。 まず最初に、結論に近い衝撃的な話を先に書いてしまおう。 自分としては、このLiaoningさんの件は、後の三燕(前燕・後燕・北燕)まで含めて、鮮卑に関係している可能性は大いにある、と考える。 実はこれは、鮮卑・三燕と関…

オーストロネシア――熱帯動植物文化の探求・聖樹カジノキ再び

次はカジノキ(Broussonetia papyrifera、クワ科*1コウゾ属。漢字で「榖」*2)の話をまたしよう。以前のカジノキ記事の続きだ。でも、ラピタ人とブタとニワトリにも触れる。 まずは、そのときの論文よりちょっとだけ前の2014年12月の論文をさらっと。 約8000…

松帆銅鐸の年代

松帆銅鐸には反応せねばなるまい。 ただし、問題点を指摘させていただく。 7個の銅鐸のうち3個と、その内部につられていた「舌(ぜつ)」2本に付着していた植物片8点を、専門業者に依頼して分析。このうち4号銅鐸とその舌から採取された4点が紀元前4…

オーストロネシアの人々――謎のヌサンタオ編

今回から、太平洋とインド洋を股に掛けるオーストロネシアの人々の特集だ。 記事は何回かに適当に切り分けたいところ。 予告したチャム族の話もある。でも、話をオーストロネシア人の関係する地域全体(周辺語族も含む)に拡げよう。読んだ論文自体がそうい…

朝夕の太陽祭祀・天変地異(淡路島舟木遺跡)

以前気になったニュース、舟木遺跡の話から。 wikipedia淡路島 淡路島北部にある、弥生時代後期~末期(1世紀~3世紀初頭)の舟木遺跡。(googleマップ) 淡路はアワ路(コトバンク。wikipedia)でもあり、国産み神話で重要な位置付けにある場所でもある。…

カミの遺伝学的解析――聖樹布と禁忌の民

そろそろ南方の話をしたい。そしてその流れで、以前D1b関連で見せた(この記事と別の直リンク)ADMIXTUREの説明もしよう。 しかしその前に面白い論文を紹介したい。これも南方の話だ。 今回の論文は海外の研究者が書いた物であり、日本の古代の知識には期待…

“ニッポン”古代人のこころと文明に迫る

見ましたか? NHKザ・プレミアム 英雄たちの選択新春SP▽“ニッポン”古代人のこころと文明に迫る 卑弥呼や古墳や銅鐸や、青谷上寺地遺跡とか蘇我氏のお話。 卑弥呼ネタ、実は今まであんまり深入りしないようにしてたんですが、今回は番組に合わせて、ちょっと…

「日本列島人形成の三段階渡来モデル」について

前回の最後で、渡来民を二段階に分ける説が出てるという話をした。 なお、今回の記事タイトルの三段階は、この新しい渡来民の二段階に、旧石器時代の最初の頃の渡来を一段階目に数えている。だから、合わせて三段階。 部分的には異なるが、大きな方向性はこ…

意外な出雲データと、文化の変移のお話

斎藤研究室の2016年の論文に、出雲のゲノムを解析したPCA(Principal Component Analysis.主成分分析)の画像があった。 Language diversity of the Japanese Archipelago and its relationship with human DNA diversity.(pdf) 意外にも、出雲の人々のほうが…

術式の論理――祟りに対する怖れと、祭祀に対する信頼

前回は、歴史記録の記述、及び、祭祀の問題に踏み込んだため、付け足し。 遺伝学とか生物学じゃないから、基礎的なところは説明が必要だ。 祭祀とか、呪術的宗教的な儀式には、もちろんそれぞれの論理がある。 その術式の論理を踏み外すような想定は、やはり…

三系統のY染色体ハプログループD1b+α(続き)

全体的な傾向をつかんだところで、もっと細かく地域的な傾向を見ましょう。 今回は最初から、C1a1も含めたβ版の内部比率を載せる。 ※2016/12/20 アイヌのデータを訂正。図と文章の一部も修正しました。 ※2018/3/10 県別のβ版データのD1b1a・C1a1やDの総数な…

三系統のY染色体ハプログループD1b+α

D1b詳細検証 C2について書いてたら(記事、どうしても長くなるよねやっぱり)、先に確認しておきたいことがあった。 それは、「D1bの中に、北から北海道ルートで日本へ入った者たちがいるのではないか?」という問題だ。 これを検証するために、先にまたD1b…

南太平洋バヌアツとトンガ、島民の祖先はアジア人

ニュース関係は時期を外すと書く機会がなくなるから書いておこう。 __10/8、忘れてたことと修正があるんで、少し直しました。男の子と女の子で性染色体の組み合わせが違うことを書き忘れてたり。 __10/12、最後のほうに、P・C1b2aなどの出てる地域と、…

世界最古の釣り針と、名前を覚えておくべき篠遠先生

沖縄サキタリ洞の話で、 こんな記事見かけたんですが。 そんなところツッコむんだ。でも釣り針にはこんなのもあるぞ。 File:MAP Expo Maori Hameçon 13012012 04.jpg Hei matau - Wikipedia, the free encyclopedia (マオリの釣り針) でも、それよりも…… …

分岐年代でわかるY染色体ハプログループC

Y染色体ハプログループCの、分岐図と、年代と、それぞれのいる場所 ここで参考にしたのは……(2016/8/5付け、ということにしておく。書いてるうちに更新されて困ったわ) ISOGGの表、およびこの真ん中あたりにある地理分布(Geographical distribution)と、少…

中国紀元前1920年の洪水証拠

米科学誌サイエンス(Science)に発表された研究結果によると、大洪水が発生したのはこれまで考えられてきたよりも数百年遅い紀元前1920年。これは、禹(Yu)王による夏王朝樹立の時期が通説よりも遅かったことを意味し、この発見により歴史が書き換えられる…