知識探偵クエビコ

人類史・古代史・神話の謎を探ったり、迷宮に迷い込んだり……

Y染色体で探る日本人の起源 2.世界のY染色体

Y染色体の分類ラベル・ハプログループ

 このY染色体系統樹の分岐に従った分類には、アルファベットと数字を組み合わせたラベルが付けられており、これを遺伝学ではハプログループと呼ぶ。
 このラベルは、頭のほうが一致していれば大きな分類が一致しているという意味となる。
 さらに細かく徹底的に分類していけば、それでどんどん長いラベルとなる。
 ただし時には新発見もあって新たな分岐が見つかったり、順番の整理をしてラベルを付け替えたり、次の文字が付け足されたりしながら、どんどんラベルは長くなっていく。(つまり今のところ、特に二文字目以降はラベルの修正があり得るため、ラベルは基本的には暫定的な物だと考える必要がある)

 ここから、Y染色体系統樹が現在どう描かれているか、実際のラベルを大まかに、それがどのあたりの人々なのかも付け加えて説明していこう。

 系統樹に関しては、基本的には日本語版wikipediaの記事とおよそ変わらない内容となっている(はずである。wikipediaは稀に荒らされることもあって表示内容を保証できないが)

Y染色体ハプログループ系統樹

 もっと正確で詳しく速い情報を求めるならば、ISOGG 2016 Y-DNA Haplogroup Tree(遺伝子系譜学国際協会。略称ISOGG)*1がいい。(詳しすぎて単純じゃないが、過去のバージョンや改版履歴も書いてあって、これは分類の違う昔の研究を調べるときなくてはならない情報となる)

 

ここで、この系統樹にさらに場所の現在地及び過去の予測を加えることで、世界地図上で人類の移住ルートを描くことも可能となる。
 その一つの試みとして英語版wikipediの画像を転載する*2が、いくつかの注意点がある。

  • 移住ルートは予測であり、これは基本的には海岸移住説に従っている。もちろん中には根拠のあるルートや定説もある。
  • 使用されているラベルが古く、二番目の数字の変わっている場合が多い。
  • 大雑把な頻度で塗り分けられているが、もちろんそこには他の集団も同じぐらいに多い場合があり、多数派も過半数に達しないケースも多い。
    またこのとき、どのレベルで分類するかによって集団の範囲がいくらでも変わるため、表現される内容も大きく変わってしまう。
    特に日本での分布はこの図で表現されるようには分かれておらず、それは私の考察とも大きく関わる。それどころか最新の調査を集める(次の 3.日本人の構成 )と、差を強調してもこの分布にはならない。
  • これがそれぞれの人口分布と一致しないことにも注意が必要。たとえば極地近くの過疎地域でいくら高頻度でも人口は少なく、それよりは人口過密地域にいて人数がそれなりにいても図に表れない集団のほうが重要である。

 とはいえ、先頭のアルファベットだけ見ても大まかな雰囲気はつかめるだろう。
Origin and migration

*1:wikipediaによれば「遺伝子系譜学国際協会(いでんしけいふがくこくさいきょうかい、英: The International Society of Genetic Genealogy)とは、分子生物学、集団遺伝学や遺伝子系譜学の研究発展のために、世界中の遺伝系図学者たちによってボランティア運営されている非商用・非営利目的の団体」

*2:ライセンスに従って使用By Chakazul - Own work based on:Numerous academic publications on the current distribution, origin and migration of each haplogroupen:Y-chromosome haplogroups by populationsEupediaHaplogroup maps by Maulucioni (World, C3, E, F, G, H, I, J, R, Q, N, O, M, S); Robertius (Europe), CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=27947271"

続きを読む