知識探偵クエビコ

人類史・古代史・神話の謎を探ったり、迷宮に迷い込んだり……

日本人のY染色体構成β

日本人のY染色体ハプログループ構成β

 ここは、元の論文へのリンクを貼れないような、あまり信頼度の高くないデータを扱うために作った別室。

 もちろん元のデータも利用し、新たなデータを加算している。信頼できるデータが見たいならそちらへどうぞ。しかしこっちには、数の少ないところとか、今まで無かった場所のデータがあるから、データの少ないところで先走るよりはこっちのデータを見たほうがいい。

日本人のY染色体ハプログループ構成β(パーセント比)
  D1b C1a1 C2 O1a O1b1 O1b2*(x47z) O1b2-47z O2 N サンプル数
北海道
札幌+旭川+N
+M北海道
40.9 3.0 5.6 1.2 1.8 8.5 17.8 17.3 0.8 2.9 762
508+201+3
+50
東北
青森+N
+M青森宮城
31.5 3.9 5.0 3.3 0.6 6.1 27.1 17.1 2.8 2.8 181
26+19
+96+40
関東
川崎+N+東京茨城
+M東京群馬千葉
37.1 4.2 6.1 1.4 0.5 7.7 25.2 16.3 1.0 0.5 771
321+137+57+50
+98+71+37
東海甲信
名古屋+静岡+N
+M静岡山梨
34.4 4.1 3.1 1.9 0.8 10.9 24.3 19.1 0.4 1.0 486
207+61+33
+143+42
北陸(越)
金沢+N
+M富山
32.0 3.9 6.3 1.2 2.1 10.3 20.5 20.7 1.5 1.4 584
530+13
+42
関西
大阪+N
+M和歌山兵庫三重奈良
30.6 6.2 5.1 1.2 1.2 8.8 20.9 23.0 2.1 0.8 487
241+19
+79+74+45+30
中国
山口+N
+M岡山山口
30.9 7.4 9.0 3.2 1.6 6.4 18.6 21.3 1.1 0.5 188
44+16
+75+53
四国
徳島三論文+N
+M愛媛
28.3 6.1 6.9 1.3 2.0 9.9 23.4 19.2 2.0 0.9 637
398+70+57+9
+103
九州
長崎+福岡+H+N
+M長崎福岡
32.1 4.0 6.7 0.5 1.0 9.0 23.0 21.2 1.4 1.0 579
300+102+53+13
+60+53
沖縄
二論文合計+N
+M沖縄
40.1 10.0 2.2 0.7 0.7 8.2 15.8 19.7 1.1 1.4 279
87+45+1
+146
全体
アイヌ限定データ除く
34.2 4.8 5.7 1.4 1.3 8.9 21.8 19.3 1.3 1.3 4954
人口比換算 34.0 4.7 5.7 1.6 1.0 8.5 23.2 19.1 1.3 1.0 単純合計せず地方別人口比換算
アイヌ限定 89.5 0.0 10.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 19
参考・韓国 1.6 0.2 12.3 2.2 1.0 22.5 8.9 44.3 4.5 2.6 506

O1b2-47z(ハプログループO1b2a1a1)の47zは変異のラベル*1である。
またO1b2*(x47z)はこの変異47zがない、それ以外すべてのO1b2下位系統を意味している。
2016/4/16更新

  • D1b九州>東北になって、ますます面白くなってきた。
  • 東北の47zD1bに迫る。日本で一番47zの比率が高いのは東北だ。
  • 北海道も沖縄もD1bの少ないデータで数字が減って、そこでもますます差が減る。
  • C1a1は岡山と沖縄で増えて、少し局地性が出てきた。(あとは南九州が問題だ)
  • やはり瀬戸内海が面白い。どうやら海人のせいだな。

追加データのメモ
 元のデータについてはそちらを参照のこと。

  • 2016/4/16、某巨大掲示板で貰ったデータを追加。元のデータが何か推測はできているが、確証が取れていない。
  • 2016/10/13、出してなかったけど、そのデータはこれ。若干怪しいところはあるが、無いよりはあったほうがいい、という感覚で使ってる。(合計チェックして、ハプログループを修正したり色を付けたり少しいじってる)→修正しました。

    f:id:digx:20161013215209g:plain

  • 2016/12/20、アイヌデータ修正。Koganebuchiの19人分だけの数値にした。また、徳島のサンプル数と影響範囲を修正。
  • 2018/3/5~9元データ画像修正。作るときコピペミスをして画像側Qは間違ってた(ただし、記事中の表のその他部分は別の計算だから合ってる)。さらにYHRDのデータを調べ、参考にして修正したものが下の画像(太字はYHRDにより確定された部分)。ただし、記事中のデータは直していない。(一部、変化のあった場所を絞り込めなかったため、端数の出る修正をした部分あり*2

    f:id:digx:20180309172527p:plain

    変更部分は以下の色つき部分(色の濃い場所で大きな変化)。Q以外では、宮城と東京のD1b1aが少し多めに増えている。少し増えただけだが長崎も印象的。(一部の分母が変わった影響で微妙な変化もある)

    f:id:digx:20180309172523p:plain

    なお、YHRD調査データは以下。分類は雑だが、C1a1-M8D1b1a-M125N-M231Q-M242などのソースを示すことの出来る*3、βの付かない正式データです。*4

    f:id:digx:20180309172521p:plain

    (本当は記事側の数字も直さなきゃいけないが、もともとβ版としていたことと、本当にデータを確定できた場所が少なく、データの内容もそれほど変わらずあまり議論に影響しない*5という事情があるため、とりあえず放置します)

*1:現在この47zの変異ラベルは使用されておらず、CTS713などが使われる

*2:増減のある一帯を、比率関係を変えずに合わせる選択をしたため。

*3:一部は引き算で算出。なお、M134がβ版のM117+F444と一致している(分類上はみ出す部分は少しあるが出ていないと考えられる)など、合計で確認している分類もある。

*4:β版(近似値的な分類処理をしていたと考えられる)が、おおまかに合ってると確認できたわけでもある。

*5:Qはもともと使っていなかった(青森はQのほうがNより多かったわけだが)。宮城のD1b1aは増えたが、今でも一番少ない地域のまま。東京は周囲と近くなり違和感が無くなった。

Y染色体で探る日本人の起源 1.知識編

この謎解き物語の主役、Y染色体について

 最初にY染色体は説明しておこう。
 これはいわば、この謎解き物語の舞台説明である。

 Y染色体は男だけが持つ染色体である。
 そして子供のY染色体は、その父親Y染色体がコピーされた物だが、時には突然変異が起こってほんのわずかな変化が起こることもある。
 しかし元のY染色体は同じだから、血縁関係が近ければそのY染色体の特徴はほぼ一致し、逆に血縁関係が離れるほど特徴が違ってくることになる。
 つまり、ある集団でこのY染色体のどこが変異しているかを調べれば、その変異の似ている、血縁関係の近い者たちがわかるわけである。(この記事の最後でこのシミュレーションをしている)
 さらにこの調査を人類全体でやって比較し、大まかにまとめていくつかに分類したのが、この次のY染色体の分類「世界のY染色体である。

 このときわかるのは血縁の近さだけではない。
 どこが変異していてどこが同じか調べることで、その変異が起こった順番や、分岐の仕方もわかるわけである。さらに詳しく分析すればその変異の古さがわかり、つまりその変異の起こった成立年代までもわかるわけである。
 つまりここで、Y染色体がいつどう分岐していったか、人類のY染色体系統樹が描けるわけである。

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ベルクマンの法則への疑問/想像を超える適応の速さ

ベルクマンの法則は現実世界で本当に成立するのか?

発熱して体温を高温に保つ動物の場合、同種か近縁種の間で、寒い地域ほど体が大きく、暑い地域ほど体が小さくなる傾向がある」
理由:同じ形であれば、体が大きいほど体重あたりの体表面積が小さくなり、それだけ冷たい外気に晒されることなく、体温を保ちやすい。
(同じ形であれば、体表面積は長さ×長さとなり、体重は長さ×長さ×長さとなる。例えば長さが2倍になれば、体表面積は4倍となるが体重は8倍に増えるため、それだけ外気に触れないことになる)

 

 これがベルクマンの法則である。

 しかし、現実の世界でこの法則が成立しているかと言えば、微妙な場合が多い。

 まず、体の大きさは直接的にその動物の力の強さとも関わり、それが生存の有利不利と結びついている

 温度が生存と無関係だとは言わないが、しかしこのベルクマンの法則は「同種か近縁種の間」という条件もついている。
 実は、ここで本当に要求されているのは種の問題ではなく、同じ形と同じ生態であり、大きさと気温以外の物理的条件を揃えることで、純粋に大きさと気温だけの比較にしようとしているはずなのである。だからこそこのベルクマンの法則は、予測ではなく法則と呼ばれるはずなのだ。(つまり、法則であるために本当に要求している条件を考えれば、条件の付け方が間違っているのではないかと考えられる)

 つまりベルクマンの法則とは、本来が非常に理想条件的な法則であるはずなのだ。

 

 また、現実に温度の移動を考えるなら、理論的にも、この同種条件や恒温動物の要求にごまかされず、しっかり考えるべき重要な要素がある
 私はこれからその話をしよう。

 

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