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知識探偵クエビコ

人類史・古代史・神話の謎を探ったり、迷宮に迷い込んだり……

西方遺跡データのY染色体ハプログループ1

遺伝学 人類 日本人

ここから順番に片付けていこう。(だいたいミトコンドリアの逆の順番がよさそうだ)

過去のある時点での状況がわかれば、現在の状況は、より後の時代に変化したものだ、とわかる。

 

まず、目的を確認しておこう。

昔の時点で、西に、モンゴルのC2(旧C3)系統(もしくはその先祖の段階)がいないとわかれば、彼らは西回りの北方ルートでモンゴルに到達したわけではないことがわかる。

それでモンゴロイド仮説はほとんど否定される、というわけだ。データが少なくて不在証明は難しい、という問題はあるけれど。

 

とりあえずこの、ヨーロッパからシベリアの、古い時代の遺跡人骨分析表の、まだ説明していないY染色体側を解説しよう。

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今まで使ってない配色だから、自家製・Y染色体の色分岐図をのせて、Y染色体の知識のおさらいもしたい。今回は細かく書き込んだ上位の分岐に注意して欲しい。完全分析の難しい遺跡人骨の解析結果には、この上位分岐の見慣れないラベルがよく登場し、その場所が重要となるからだ。

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Y染色体ハプログループは、F系統の下の分岐が伸びて、その先で細かく分かれて増えている。*1

そのため、生まれた年代の異なる、アフリカ系統ABと、古系統DECFと、この以下の中間的なGHIJと、以下の新しい系統に分けて考えられるわけだ。

そして新しい系統の中にまた、アジア中心で大繁栄するや、ヨーロッパ中心で繁栄するや、アメリカ先住民に多いや、ユーラシア北方に多いといった、二系統(NOPQR)に分かれる世界に拡がった集団があるのだ。

そこでY染色体分岐図は、アジア系統NO赤系統ヨーロッパ・アメリカ系統PQR青系統アフリカ系統モノクロ古い系統暗めで、緑から黄色のグラデーション中間系統にして、残りは実際に並べたときの見やすさを考え、ある程度ミトコンドリアと共通するこんな配色にした。また、とりあえずC・O・Rを少し分けて表記する予定がある。古いと言ってもC2(旧C3)が問題で、こちらは新しい大影響のモンゴル帝国と関わり、逆にC1は遙かに古い時代に登場してくる(古い時代の表に登場することに注意)ため、意味合いがかなり違ってくるのだ。なお、OとRは数の多さと影響範囲の大きさ故の分割となる。

(大系統は全部でおおまかに六つ。モノクロのアフリカ系AB・(出アフリカ)暗色古系統DECF・緑中間系GHIJから、黄のKLTに繋いだ・赤のアジア系NO・PQRに近いMSは青紫・青の欧米系PQR。最後は「欧米」といってもアメリカ先住民を指す「米」。ミトコンドリアより数が多い分配色に苦心してます

 

分岐した時代に違いを持つことが、ミトコンドリアの分岐図(出アフリカ後、いきなり三大分岐MNRに分かれてそれが世界に拡がっている。アフリカを合わせて大系統は四つだから、配色はまあまあ簡単だった)との大きな違いになっている。

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注意して欲しいのは、新しい、と言ってもこれらの分岐はまだ歴史時代には遙かに遠く、一番右のY染色体ハプログループの成立でも三万年ぐらい前の出来事なのだ。

だがそれでも、最初の遺跡データはその分岐時期にかかる古さを持っていて、分岐過程が多少見えてくることになる。

ただし、それ以上分析できないために分岐の上のほうのラベルとなっている場合も多いと考えられ、そこは気をつけないといけない。

 

表の記号の意味をいくつか説明しよう。

一番最初、シベリア西端のUst IshimのK(xLT)は、LT以外のKで、これは現状で論理的に「K2以下の何か」を意味している。(今は"K1=LT"だから、それ以外ならK2以下という理屈)

証拠物がそれ以上分析できなかったと考えられるため、本当ならもっと下の分類だった可能性もある。

特に、BTは「BからTまでのいずれか」で、つまりA以外であることしかわからなかったことを意味している。CT(not IJK)は、「IJK*2以下ではない」ため、「CFGHのいずれか」を意味する。(そこでとりあえず暗い緑をつけてみた)

 

この古い時代の表の、Y染色体ハプログループの注目点をいくつか。

  • この古い時代のヨーロッパの領域は、おおむね中間系(緑系統)の、特にIが多い*3
  • しかしもっとも古い、西シベリアのUst Ishim(47480年前-42560年前)がK(xLT)。既にこの時点でラベルは、少なくともこのあたりまでは登場していたわけ。
  • は考古学証拠では、東のシベリア・マリタ遺跡から現れ、最初は西のほうの遺跡からは出てこない。
  • 古代系統は(それ以上解析できなかった可能性に注意)だけでなく、もいた。インドなどにいるC1b系統が少なくともロシアあたりに、日本人の親戚であるC1a(C1a2)系統が、こちらはかなり西にまでいた。しかも、スペインのLa Branaだけでなく、もっと古い時代からも見つかっている。
    また、は、どうやらなどよりも早い段階からヨーロッパにいた、ということでもある。*4
  • そして、問題のC2は、今のところ発見できていない。ただ、データも少なく未発見かも知れないし、先祖段階かも知れない分析できなかった人骨もある。

 

 ところでY染色体は、データが少ないという宿命的な問題がある。

ミトコンドリアは女だけでなく男も持っていたが、Y染色体は男しか持っていないため、単純計算すると遺跡から半分ほどしか出てこないことになる。(まあ、多少大きな男の骨のほうが残りやすいかもしれない)

しかも遺跡人骨のY染色体は、量が多い分完全な形で情報の残っている可能性が低くなり、ミトコンドリアよりも解析するのが難しくなる。(解析技術はどんどん進歩する物だから、期待してるけどね)

もう少し新しい時代のデータに進むが、グラフにできる量の固まったデータがそれほどなくて、苦労してしまった。

では、これは次回ということで。

 

*1:なお、このFと、K・PにA・Bは、分岐部分も含む分類となっている。特にKは、それ以下の下位分岐の定義のすき間を埋める、その他的な位置づけになっていてややこしい。

*2:この「IJK」は分岐図上に存在する。

*3:どうもヨーロッパの学者は、このあたりの新しめの集団からが、40000年ほど前にヨーロッパに現れたクロマニヨン人だということにしたいようだ。

*4:ということは、クロマニヨン以前ネアンデルタール以後の人類として、別に定義するつもりなんだろうか。確かに古代系統は、もともとあったクロマニヨンの定義よりも古くから存在していたということになるんだが。