知識探偵クエビコ

人類史・古代史・神話の謎を探ったり、迷宮に迷い込んだり……

“ニッポン”古代人のこころと文明に迫る

見ましたか?

NHKザ・プレミアム 英雄たちの選択新春SP▽“ニッポン”古代人のこころと文明に迫る

卑弥呼や古墳や銅鐸や、青谷上寺地遺跡とか蘇我氏のお話。

卑弥呼ネタ、実は今まであんまり深入りしないようにしてたんですが、今回は番組に合わせて、ちょっとだけツッコんだ話を書きます。

 

何より、究極の選択の、問題の立て方が面白かったでしょう?

卑弥呼の共立が、和平のためであったことから考えた問いとして――

卑弥呼出身地はどこか?」

卑弥呼はどこか?」(邪馬台国はどこにあったのか?)――じゃないんです。

この二つは、全く意味が違う。出身地と都は同じ場所とは限らない。それに確かに、和平のためにどの勢力からトップとなる者を選ぶのか、という視点から考えるのは非常にいい。

実は、都は複数あった可能性もあります。引っ越した可能性があるわけです。

それに、卑弥呼の都とトヨの都を考えた場合でも、少なくとも建物は違うはずだし(番組中にも、死んだときその宮殿は使わなくなる、という話がありましたよ)、そのとき場所も違ってくる可能性がある。

これ、学者の皆さんとか、邪馬台国論争を深く考えてる方々は、承知の上のはずなんですよ。

もう一つついでに、「卑弥呼のようなシャーマンは(女王のような国家的な位置づけとは別に)、卑弥呼が最初ではなく、トヨが最後でもない」のではないですか? この二人で終わりってわけじゃないはず。すると、その者たちに対応したそれぞれの時代の住居(都)があり得るのでは、ということにもなる。(このとき、支持勢力も変化するだろうということに注意。卑弥呼とトヨでも、中国に持っていった貢ぎ物が全然違ってたり)

 

そしてこの選択に出てくるのが、「北九州」「近畿」そして「瀬戸内(吉備)」です。

卑弥呼問題に詳しい方々なら(賛同するかどうかは別として)、なんでここに具体的に「吉備」が出てくるか、理由はわかるでしょう。

卑弥呼説があり箸墓古墳の埋葬者だとされる倭迹迹日百襲姫(ヤマトトトビモモソヒメ)が、この吉備の吉備津彦と兄弟姉妹関係にある、という話は僕も以前の記事で書いてます。つまりこの姫様、出身を問えば吉備の可能性があるわけです。*1

しかし、番組中にこの具体的な名前は出てこなかった。

でも吉備の楯築遺跡の話とか、弧帯文とか特殊器台とかの考古学的な話はありました。まあ、考古学的な理由は重要視すべき。でも、考古学だけでは、吉備からが来たという証拠にはなってないんです。移動したのは男じゃないのかとも言える。

やっぱり、口に出さなくとも倭迹迹日百襲姫のことは頭にあるはず。

 

ところで、歴史上最初に海外書物に記録された王、倭国王帥升が出てきました。

しかも、ひょっとすると、この人物が吉備の者で楯築遺跡の埋葬者なのでは、なんて松木武彦さんの話も。

*1:なお、このモモソ姫だけじゃなく、先祖がどうなのかも問題です。世代(年代)の違う話の可能性もある。