ミトコンドリア編オマケ 極東N9bは日本が元で、しかもロシアの集団は新しかった?
ミトコンドリアハプログループNについての論文を読んでたら、語られてる内容と関係ない(論文本文で触れられない)が、日本人にとっては重要データがあった。
しかも2015年のこの論文、最近では珍しいNの北方ルートを説く論文だ。
(個人的な判断を書けば、実際にはインドにもN(N1)はちゃんといるため、南方ルートに分断はない。前のこの記事の論文のデータだ(インドにはL3もいて……)。これはつまり、オーストラリアにはY染色体C1bとともにミトコンドリアNが海岸ルートで早い時期に移動したのではないか、ということ)
そんな北ルートの論文に、N9bのこのデータが付いてた。
N9b部分の抜粋キャプチャ(元はめちゃくちゃでかいエクセルの図。論文の最後にリンクがある)
さらに一部、ロシア関係部分の抜粋
ロシアのN9b集団(N9b4a)は日本の人の子孫で、しかも共通祖先がかなり新しいだと!
いや、まだ一番右のFJ493503Russiaが問題で、この人物はN9bにあたる。
ただし、さらに上位のN9b'c(N9bの一つ前の分岐)に日本のAP008837がいる。(最初の表の一番左)
この人物コードは、ianloganの表(http://www.ianlogan.co.uk/sequences_by_group/n9b_genbank_sequences.htm)によれば、EU007856がナナイ、HM776709がウリチ、そしてKF148***はみんなツングース系(これ以上の詳細情報はない)だとある。ただ、コードの数字の並びを見ると、このたくさんいる集団がほぼウデヘにあたるはずだ(KF148517一人だけ少し数字が離れてるが、他はほぼ続き番号)。
ただ、肝心のFJ493503Russiaは、どこのロシアだか情報が無くてわからない。
日本もそれぞれがどこの日本だか、アイヌかもわからない。
約642年前(0~1585)あたりから増えたとすると、ウデヘとかそんなに人口のいる集団じゃなく2000人程度だが、それでも女の三割で300人ぐらいに増えたとすると、これはかなりの増加率となる。
最初が1人で30世代ほどで300人に増えたとすると、それぞれの世代で女を平均で1人あたり1.2人以上産む必要がある。
このとき、ミトコンドリアは男の子供では受け継がれない事に注意。関係あるのは女の子供の数だけで、それで平均1.2以上が必要なのだ。
可能性として思いつくのは、モンゴル帝国がサハリンからアイヌを追い出した700年ほど前の出来事。モンゴルの樺太侵攻 - Wikipedia
このとき、サハリン側に残った女がいた、と考えるわけだ。
あるいは、安藤氏の乱 - Wikipediaの影響で、避難民(女)が発生したか。
また、年代はあまり合わなくなるが、それ以前にも関係ありそうな出来事はいくつもある。(蝦夷 - Wikipediaだけじゃなく、粛慎 - Wikipediaとかオホーツク文化 - Wikipediaも見てね)
もちろん、時期不問で、海外との結婚外交のようなものや、単純な通婚もあり得る。
あるいは、それ以前に移動していて、この700年前前後の時期にボトルネックが発生したが、その時期から後でまた増えた可能性もある。(最初の移動のきっかけは前記の出来事あたりもあるが、もっと古い移動もあり得る)
ここでもモンゴル帝国の活動などの影響はあり得る。この要請をしたのは吉里迷(ギレミ。後のニヴフだという)だから、一時的に追い出そうとする社会的風潮があったかも知れない。
また、少し南で少し古いが、白頭山が10世紀(1000年ちょっと前)に大噴火した、とかも関係あるかも知れない。
なお、増える比率がかなり高いことから、基本的には女として母親としてかなり気に入られ、尊重され大事にされていたと見る。
そうでなければここまで増えることができないだろう。