ミトコンドリアで探る人類史 日本・モンゴルなどアジア極東から北方
いきなり行きます。色の対応は前回と同じこれ。(表にも直接書き込んだ)
だいたい東から順番。場所は付属地図を参照のこと。
日本は表の真ん中あたり。
★マークは遺跡人骨のデータ。アイヌ江戸は江戸時代のアイヌ、オホーツク文化は5世紀から13世紀の北海道にあった異質の文化。縄文北海道とか東北は複数の遺跡の合計データ。小竹(おだけ)貝塚(市公式、県公式)は富山にある縄文時代前期(約6000年前)の遺跡。紛らわしいが沖縄貝塚は沖縄の平安時代あたりまでの時代名称「貝塚時代」で、この表の遺跡は新しめ。
モンゴル(「新バルグ左旗」もモンゴル人の住む中国・内モンゴル自治区の地名)は少し後ろ。ここも遺跡データ付きで。*1
ミトコンドリアのデータの面白さは、遺跡人骨のデータが豊富なこと。探せばいろいろ出てきちゃう。(悪魔のささやき>スレイブ俺。実はもっと詳しいデータも持ってるけど、グラフにするためにまとめちゃってるんだぜ)
ただし、どうしても数の少ないことは多い。もちろん数がある程度無いとグラフに向かない。
また遺跡人骨は、血縁関係のある一族のものだったり、データとして偏っている可能性があることに注意が必要となる。
では表について。
まず、赤いM系統の多さと、西に行くと増える青いR系統というのが見所。ただしB・FはR系統だが台湾などに多く、この表から外れた東南アジアで多くなる例外的な存在。縄文時代の日本の基本系統N(実はすべてN9b)の多さも面白い。
で、日本。
本州も沖縄も大陸側の中国や韓国にそこそこ似ている。面白いことに、縄文時代の関東は不思議と現在の沖縄に似ていて、縄文時代の東北などとは似ていない。ところが昔の沖縄はまた少し違っていて、縄文関東との共通性には偶然の要素もあるようだ。
また、弥生の隅・西小田遺跡(くま・にしおだ。福岡県筑紫野市)のデータは意外と大陸に似ていないように見える。むしろ表面的には縄文関東のほうが大陸と似ていたりするぐらいだ。
ただし、細かい内容を調べると違いが出てくる。たとえばN。
日本の縄文時代のNはすべてN9b。オホーツク文化や現代のアイヌ及びサハリン周辺もそうで、現代の沖縄でもほぼN9b。しかしこの弥生遺跡はすべてN9aで、現代の本州は両者が混合している。韓国のNもこのN9aが大半。中国もN9aは多いが、他のNもいる。
またMなど他の要素にもそれぞれ違いのある場合がある。
徹底的に細かく調べれば詳しい事情がわかるのはY染色体と同じだ。(ちょっとN9bについてオマケがある)
次にモンゴル 。
Egyin Gol(Valley)は2000年ほど前の遺跡で、バイカル湖に近い北のほうにあり、時代からして匈奴と関係するとされる遺跡の一つ。
まあ、北のほうは基礎系統Mが少ないのが特徴で、南との数量の違いを味わっていただこう。(たとえば縄文東北を見ても、基礎のMとNばっかりなわけだ)
説明忘れてた。ずっと西のカスピ海の北のKalmyk(カルムイク)はロシアのオイラトでもともとモンゴル帝国の構成民族。そして新疆モンゴルは父祖の地に帰還したこのカルムイクだそうだ。
見るポイントはまだある。
アメリカがこの極東の先にあることは重要。アメリカ組A・B・C・D・Xがどこにいるかに注意。
A・D・Cはすぐ近くに見つかるが、Bは少し見つけにくい。Xはアルタイまで行かないと見つからない。
もう一つ、逆に極東にいるのにアメリカにいない集団、G・Z・Y・Fなどにも注意。基礎系統のM・N自体も含め、これらの集団がアメリカにいないのは何故か、というのも重要。
次はアメリカだ。
データ詳細。これで全部だっけと思い出すのに苦労した。やり方考えねば。
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一部極東や縄文北海道や東北やオホーツク文化はこの論文。
Ancient mitochondrial DNA sequences of Jomon teeth samples from Sanganji, Tohoku district, Japan
- 極東はこれも。
- オホーツク文化の元の論文も見た。
- モンゴル周辺その1。
Phylogeographic analysis of mitochondrial DNA in northern Asian populations. - PubMed - NCBI
- モンゴル周辺その2。モンゴル自体もこっち。
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小竹貝塚は富山市公式の国立科学博物館便り15にもあったが、もっと詳しい報告。
- 江戸時代のアイヌはここにあった。
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Egyin Gol遺跡。
- 中国はサンプル数の多いこれ使ってた。(ただし、M9調べててもE調べてないとか、中国は出る可能性があるため気になる。実はY染色体データもあるが、分類が大雑把すぎるから使えない。まあ、中国なら他の論文がある)
- チベットはサンプル数6109人分という論文。(Y染色体も2354人分ある)
- ここのフィンランドはY-fullから持ってきた1000 genome projectのデータ。