知識探偵クエビコ

人類史・古代史・神話の謎を探ったり、迷宮に迷い込んだり……

Y染色体で探る日本人の起源 4-0.まずは時代の定義

時代の定義 旧石器時代縄文時代弥生時代、そして最終氷期

 まず、なるべくシンプルに時代定義の話をしておこう。(脱線したくなることだらけだが)

 最初は旧石器時代である。これは日本列島に人類が登場してから土器を使用し始めるまでの時代を指す。
 日本の石器の出土物でしっかり確認の取れるのは35000年前からで、それより前は不確実とされている。
 日本旧石器学会:日本列島の旧石器時代遺跡 http://palaeolithic.jp/sites/index.htm

 時代の説明をするのに都合のいい、わかりやすいグラフが旧石器学会にあった。

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 ちょうどいい、縄文時代初頭(=氷河期が終わる)までの遺跡分布図もあった。

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 次に縄文時代とは、土器が登場してからの時代である。この土器の出現をもって旧石器時代との境目とされていて、これは今のところ約16000年前に始まるとされている。(だから実は、より古い土器が発見されることで年代が変わる可能性を持っている)

 ところで、実際に土器の発見と年代の決定で変わってきた縄文時代の定義の、その基準自体を変えようという話はあったそうで。
 土器出現の年代と古環境 研究史の整理から 工藤 雄一郎
 縄文時代の定義が時代によってどう変わったか、どう提案されたか、表があったから引用させていただこう。(念のため。今の定義はNであって最後のOではない)

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 弥生時代の定義は、水田稲作を基盤に置いた農耕社会の始まり、とされている。
 ただこれが実際にいつなのかが非常に問題となる。水稲の渡来年代も今後の研究でどこまで遡るかわかったものではないのだから。

 このとき問題は農耕社会の定義にもある
 だいたいこの弥生時代の定義自体も、日本人が既に縄文時代から水田稲作以外の農耕をしていたことをちゃんと認めているわけだ。

 ちなみに海外の学者は、日本の学者は必要以上に穀物の一品種に過ぎない水田稲作を特別視し過ぎだと指摘しているそうだ。確かに、重視すべきは農耕そのものである。この食い違いは、日本と周囲との農耕文化(もちろん水田稲作限定の考え方はあり得ない)の伝播交流を考えるときの妨げともなる。

 

 これは縄文農耕の問題ともなる。

 縄文人は、間違っても農耕をしない野蛮人などではないのだ。

 

 青森(三内丸山遺跡)の縄文サイトに小山修三さんの話がある。
 第5回 縄文農耕と人口アレルギー|JOMON FAN:縄文ファン

ヒエは北海道・東北地方で、野生から栽培へのプロセスが明らかにされ、ほかにソバ、ダイズ、アズキ、アブラナ類(ダイコンやカブ)、シソ、エゴマなどもあって農耕の条件の1つである「作物複合」が出来ていたらしいのだ。さらに興味深いのは辻誠一郎さんがマメ類も日本で栽培化された可能性があると言っていること。すると縄文人は自力で農耕を始めたわけだ。わたしはそれは焼畑農耕だったと考えている。

「農耕」というキーワードを入れると、前期から中期の人口増は説明しやすくなる。食事情が安定したために、遺跡に大規模なものが増え、大型モニュメントがつくられ、物質文化が豊かになることは三内丸山遺跡が証明するところである。

 人口アレルギーってなんだよ? と言う人は引用したところ以外を読んでください。(ここの文章は全引用したくなってしまう)

 

 この問題ならやっぱり佐藤洋一郎さんの本も読むべきだ。

今回は最新作が知りたくてあえて"佐藤洋一郎 縄文"を検索してみた。学問分野は、新しい知見を求めて発行年を確認して読まなきゃならないものだ。(変なのがひっかかってたらアマゾンのせい)

 

 シンプルに書くつもりがやっぱり脱線してしまった。旧石器時代は我慢したのに。

 

 ここで最初のグラフにもある、地質学的な時代定義も持ってこよう。

 それが最終氷期(約七万年前から約一万年前)である。これは文字通り、地球史の上で最後に起こった氷河期を指している。
 また、本来はこの最終氷期の終わりを指していた地質時代更新世完新世の境目もあるが、こちらは現在ではグリーンランドの氷床コアから、11700年前ときっちり定義されている。

  日本第四紀学会|第四紀学最新情報・第四紀の定義

 

 第4章はこの、最終氷期の終わるまでにやってきたと考えられる人々の話をする。(結局分けることにした。直感的に長くなりそうだなと思った項目は、追加も出るせいで想像以上に長くなるから最初から分けるべきだった)

 この最終氷期は、その始まりがアフリカから出た現生人類が世界に移住し拡がり始めた時期とも重なっており、さらに海水位が低下して今より大地が拡がっていた時代ともだいたい一致するため、人類の移住の話をするのに非常に都合の良い時代区分なのだ。縄文時代とか弥生時代みたいに、新発見でずれていっちゃったりしない信頼の置ける境界である)
 この最終氷期は、旧石器時代だけでなく、縄文時代の最初の部分(草創期)も含んでいる。

 

 なお日本には、発掘して地層として目に見える火山灰という、利用しやすい時代の物差しもある。
 鬼界カルデラ大噴火によって生じた鬼界アカホヤ火山灰は、(縄文時代草創期の直後の)縄文時代早期と前期を分ける境界とされている。(最初のグラフ参照のこと)
 ただしこれら火山灰は酸性で、それ故に骨を分解してしまうわけだが。

 

Y染色体で探る日本人の起源』 目次

 0.プロローグと案内

 1.知識編

 2.世界のY染色体

 3.日本人の構成

 4-0.まずは時代の定義(今いるのはココ!)

 4-1.氷河期が終わるまでにやってきた人々1 D

 4-2.氷河期が終わるまでにやってきた人々2 C1

 4-3.氷河期が終わるまでにやってきた人々3 C2(旧C3)(ただいま制作中! 近日公開)

 5.その後やってきた人々(ただいま制作中! 近日公開)

 6.混合民仮説(ただいま制作中! 近日公開)